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在外同胞法、3日から施行

「国内居所申告」など導入



 世界経済体制に応じ、在外同胞に国境の門戸を広げて出入国と滞留及び母国での経済活動上の制約を緩和することを目的とした法律「在外同胞の出入国と法的地位に関する法律」が12月3日から施行された。

 同法律の施行によって、在外同胞の母国への出入国及び滞留に対する制限と不動産取得、金融、外国為替等での各種制約が緩和され、母国投資が促進されるとみられる。またこれまで本国に長期滞在する在外国民が日常生活の上で住民登録証を根拠とした各種許認可申請に多くの不便をこうむっていたが、住民登録に代えて国内居所申告をすることによって解消されることになった。


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解  説
(韓国検事・鄭然洙氏 寄稿)

 今年9月2日、「在外同胞の出入国と法的地位に関する法律」(以下、在外同胞法と言う)が公布されて、12月3日から施行された。98年8月、言論に在外同胞法試案が公開された時から賛否両論があり、政府部署間の意見調整を経て、98年12月、国会に法案が提出された。国会の常任委員会である法制司法委員会でも異例の2回にわたって法案審査小委員会に回付されるなど〓余曲折をたどり、政府案の一部が修正されて国会を通過した。法案が国会を通過した以後も中国同胞が在外同胞法の適用対象から除外されたという理由で市民団体を中心にした法案公布反対及び法律改正を主張する声があがった。ここでは、在外同胞法の立法趣旨、法律の性格、法律の主要内容と争点に関して立法実務者の立場から簡単に説明する。


◆立法趣旨

 在外同胞法は一言に要約すれば「地球村時代、世界経済体制に応じて在外同胞に国境の門戸を広げて出入国と滞留及び母国での経済活動上の制約を緩和することを目的とした法律」と言える。

 立法趣旨に関して補完説明すれば、第一に地球村時代、世界経済体制に応じることと言える。在外同胞法は在外同胞に母国の国境の門戸を広げることによって在外同胞の生活圏を広域化・国際化して、同時に在外同胞らの国際的活動を刺激として国内にいる国民の意識形態と活動領域の国際化・世界化を促進することを目的とした。

 第二は、在外同胞の経済回生の参加を容易にすることだ。在外同胞の母国への出入国及び滞留に対する制限と不動産取得、金融、外国為替等においての各種制約を緩和することで、母国投資を促進し、経済回復の参加雰囲気を拡散させることだ。

 第三は、在外同胞の二重国籍要求に含められた隘路事項の受け入れだ。在外同胞らが要求する二重国籍を許容する場合、表面化する様々な問題点と国民的一体感の阻害などの副作用を除去しながら二重国籍の許容要求に含められた隘路事項を受け入れることで母国に対する不満を解消することだ。

 第四は、在外同胞の居住国定着を誘導することだ。永住する目的で海外に移住した同胞の中で相当数が母国との関係が断絶されるという孤立感と母国での経済活動の制約、年金支給停止などを心配して居住国の国籍取得を避けて居住国に完全に定着できないのが現実であり、このような点を勘案して在外同胞らが居住国国籍を取得、定着しても母国との関係が断絶されないようにして居住国定着を誘導することだ。


◆法の性格

 在外同胞法はIMF経済危機状況で在外同胞らの経済力を活用して、その間、提起されてきた在外同胞らの請願を収斂して国内での経済活動に不便がないようにとの趣旨で立案された在外同胞らに対する経済関連規制を緩和する法として在外同胞政策の基本方向を設定するが、在外同胞政策の全般を包括的に扱う基本法ではない。言い換えれば、在外同胞らが韓国に投資し、国内で経済活動をするために出入国、外国為替取引、金融取引などの制限を解消することを一次的な目的としている法律だ。

 現在、開放化の趨勢に伴い外国人らに対する規制を大幅緩和しており、究極的にはWTO体制のもとで全面開放しなければならない状況で母国縁故権を持った在外同胞らに、まず規制を緩和する過渡期的な性格の法律とも言える。


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「在外同胞法」の骨子

■制定理由

 在外同胞の母国への出入国及び滞留に対する制限と不動産取得・金融・外国為替取引等における各種制約を緩和することで母国への投資促進と、二重国籍許容要求に含んだ隘路事項を選別受容することで居住国定着を誘導する為に在外同胞の出入国と法的地位に関して定める。


■主要骨子

1、在外同胞を在外国民と外国国籍同胞に区分し、在外国民は大韓民国の国民として外国の永住権を取得した者、または永住する目的で外国に居住している者で、外国国籍同胞は大韓民国の国籍を保有していた者、またはその直系卑属として外国国籍を取得した者のなかで大統領令で定める者を定義する(第2条)

2、この法は、在外国民と在外同胞滞留資格を持つ外国国籍同胞の出入国と国内での法的地位に関して適用する(第3条)

3、外国国籍同胞は、出入国管理法上の在外同胞滞留資格で入国・滞留することができ、国家の安全と秩序維持・公共福利・外交関係、其他、国益を害する憂慮がある場合には在外同胞滞留資格を附与しないものとする(第5条)

4、在外国民と在外同胞滞留資格で入国した外国国籍同胞は、この法の適用を受ける為に必要な場合、国内に居所を定めて出入国管理事務所長に国内居所申告をすることができる(第6条)

5、国内居所申告をした在外国民と外国国籍同胞に対しては、国内居所申告証を発給し、国内居所申告証を住民カードの代用として使用できる(第7条・第9条)

6、外国国籍同胞の出入国に関する事項と国内での法的地位を次のように規定する

(1)在外同胞滞留資格として2年間滞留でき、延長も可能とし、再入国許可なく自由に出入国することができる(第10条第1項乃至第3項)

(2)在外同胞滞留資格の活動範圍内で自由に就業その他経済活動をすることができる(第10条第5項)

(3)軍事施設保護区域を除外した国内土地の取得・保有・利用及び処分が可能とする(第12条第1項)

(4)この法の施行後、1年以内に非実名不動産を実名に転換した場合、履行強制金と課徴金を免除する(第11条第2項)

(5)外国換取引法第18条の規定に依る資本取引制限措置を除外して国内金融機関を利用するにあたり、居住者である国民と同等の権利を持つ(第12条)

(6)90日以上国内に滞留するときには医療保険の関係法令が定める通り医療保険の適用を受けることができる(第14条)

7、在外国民の国内での法的地位は次の通り規定する

(1)外国換取引法第18条の規定に依る資本取引制限措置を除外して国内金融機関を利用するにあたり居住者である国民と同等の権利を持つ(第12条)

(2)外国に居住する前から所有していた国内不動産の売却代金と国内に搬入した外国換等の支給手段を外国に搬出する場合、外国国籍同胞と同等の待遇とする(第13条)

(3)90日以上国内に滞留するときには医療保険の関係法令が定める通り医療保険の適用を受けることができる(第14条)

(4)韓国国籍を喪失しても公務員年金・軍人年金及び私立学校教員年金を継続受領できる(第16条)

(5)国家有功者・独立有功者とその遺族の場合、我が国国籍を喪失しても補償金を継続受領できる(第15条)


■施行日

 公布後、三カ月が経過した日(99年12月3日)

「在外同胞法施行令」主要骨子(99年11月27日大統領令第16602号)


■施行令骨子

1、外国国籍同胞の範囲を政府樹立以後に国外に移住した者で大韓民国の国籍を喪失した者と政府樹立以前に移住した者で外国国籍取得以前に大韓民国国籍を明示的に確認を受けた者などを具体的に定める。

2、法務部長官は在外同胞滞留資格の欠格事由の有無を判断する為に関係機関の長に身元照会等を依頼したり必要な事項に対して求められるようにする(令第4条)

3、在外同胞の出入国及び滞留に関する重要事項を審議・調整する為に法務部に在外同胞の出入国及び滞留審議調整委員会を設置・運営するようにする(令第5条)

4、在外同胞が国内居所申告をしようとする時には管轄出入国管理事務所長等に申告書を提出するようにするなど、国内居所申告手続き・移転申告方法及び申告証発給手続き等に関する事項を具体的に定める。(令第7条乃至第14条)

5、外国国籍同胞が大韓民国の安全保障と秩序維持・公共福利・外交関係その他、大韓民国の利益を害する憂慮があったり禁錮以上の刑を宣告を受けた場合など、一定の場合には滞留期間の延長を許可できないようにする。(令第16条)

6、外国国籍同胞が国内不動産を取得・保有する為に申告手続きに関しては外国人土地法施行令の関係規定を準用するようにする。(令第17条)

7、国内居所移転申告義務違反等の場合に附課する過怠料の附課基準及び附課手続き等を定める。(令第18条)

(1999.12.08 民団新聞)



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