民団新聞 MINDAN
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"学べる喜び"いきいきと

夜間中学のハルモニ



兵庫中学北分校の夜間学校でで学ぶハルモニたち

■全国34校で約1000人在籍

 義務教育を受けることなく、生活に追われて生きることを余儀なくされた一世のオモニ、ハルモニたちに教育の場を提供する夜間中学校。現在、全国に34四校ある夜間中学に学ぶ約3500人の生徒の内、在日同胞は三分の一に当たる約1000人にのぼる。全国の夜間中学にたずさわる教師たちが教育実践を報告する夜間中学校研究大会が九、十の両日、神戸で開催された。

 夜間中学の現状や課題を話し合う研究大会では、全生徒の3分の1を占める在日同胞の教育問題も五分科会の一つとして取り上げられた。


■読み書きで自己表現

 夜間中学で学ぶ同胞のほとんどは、日帝植民地支配下で教育を受けることができなかったハルモニたち。解放後も同胞たちはまともな職にも就けず、生活苦にあえぐ中で学校教育とは縁遠かった存在だ。日本語だけでなく韓国語さえも耳で覚えただけで、文字の読み書きができない人たちが大半であった。

 研究大会の初日、神戸市立兵庫中学北分校に学ぶ李斗順さんが自身の体験を切々と語った。渡日後、差別と偏見の中で生活せざるを得なかった状況の中から見いだした一縷の光明が夜間中学だった。83歳になる友人が夜間中学へ通う姿を見て驚いた李さんは「明日死んでも学校の門をくぐりたい」と家族に訴えた。

 兵庫にある3校に分散して行われた教師たちの交流会で、地元の授業の見学が行われた。

 李さんと机を並べて勉強するのは大半が同胞生徒。先生の後について一生懸命に日本語の教材を読み上げていた。

 授業は一見、世間話の延長のようだ。教材に出てくる「昔カレー」について1人のハルモニが「昔はなー、黄色いなー…」と切り出せば、隣のハルモニから「そうや、そうや」と合いの手が入る。和やかな雰囲気の中で進められる授業に、今日の"詰め込み教育"はない。

 階段横の壁にはハルモニたちが一生懸命に書いた墨書が張り出してある。「ユー(ハングル)さんがおらんとさびしい、あしたはきてもらわな」(李粉伊)、「みんなでわあわあ言うて楽しいで」(金末周)、「一文字でも覚えたら心に染みていく」(金南喜)、「金春子、金春子、これだけはわすれへん」など夜間中学で学べる嬉しさ楽しさが伝わってくる。


■教育現場の広報拡大へ

 また東生野中学生が日頃の思いを鉛筆で表現した中にも「いちねんせい、わらうと、しわおおいな、やかんちゅうがくせい」「9人かそく(家族)でたいへんだった。これからべんきょうがんばるわたしです」「としいって、がっこうがすきになりました」とここでも学べる嬉しさがあふれている。

 東京の李さんは「京都いてえがたてした。しぱいみたり、いのいのな、みました。ならいてたいビすみておきかた。ぴこりしました」と表現した。まさに耳で聞き、自らの口で発音してきた日本語を、そのまま表現したものだ。それでも「京都に行ってよかったでした。芝居を見たりいろいろなものを見ました。奈良へ行って大仏を見て大きかった。ビックリしました」と驚いたり感激した思いを表現することができている。

 まだ多くの一世ハラボジやハルモニが読み書きができない状況にある中で、夜間中学の積極的な広報を進めていく方針を打ち出している。

(1999.12.22 民団新聞)



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