法律相談Q&A

在日同胞の、在日同胞による、在日同胞のための生活者団体


法律相談Q&A 内容

掲載日 : [20-05-27]   照会数 : 3504

相続=紛争の未然防止に遺言を

在日韓国人法曹フォーラム(李宇海会長)の協力を得て、同会所属弁護士に在日同胞の生活に関連した法律相談Q&Aを連載することになりました。

Q

 先月、私の夫が心臓発作を起こし急死しました。私も夫も在日韓国人3世です。私たちには、息子が2人、娘が1人います。子どもたちは親元を離れて生活しています。夫の父(要介護3)は老人ホームで生活しています。夫の母と夫の祖父母は、何年も前に他界しています。また、夫には弟が1人と妹が1人います。夫の相続人は、私以外にもいるのでしょうか。夫の遺産は約3600万円でした。私の相続分はいくらになりますか。

 


A

 まず、相続人を決めるにあたり、どの国の法律を適用するか決めなくてはなりません。相続は、亡くなった方(被相続人)の本国法に拠ることとなっています。あなたのケースでは、夫が在日韓国人ですので、本国法である韓国の民法が適用されます。

 次に、誰が相続人となり得るのかを見ていきましょう。韓国民法では、①配偶者②直系卑属③直系尊属④4兄弟姉妹及び4親等内の傍系血族が法定相続人とされています。

 ここで、用語について解説します。「直系卑属」は子や孫を、「直系尊属」は父母や祖父母を指します。「4親等内の傍系血族」はおじおば、甥姪、いとこ、祖父母の兄弟姉妹、兄弟姉妹の孫(甥姪の子)までを指します。

 あなたのケースですと、配偶者(あなた)と2人の息子、1人の娘、夫の父、夫の弟と妹が相続人になり得ます。そうすると、みんなで3600万円の遺産を分け合うと思いますが、そうなりません。なぜなら、相続人には順位があるのです。

 韓国民法では、被相続人に配偶者と子(直系卑属)がいる場合、子と配偶者が第1順位の相続人となり、直系尊属、兄弟姉妹及び4親等内の傍系血族は相続人にはなりません。したがって、あなたのケースですと、相続人は配偶者(あなた)と子ども3人の計4人となります。この4人で夫の遺産を相続します。

 法定相続分について、韓国民法では同順位の相続人が複数の場合は、その相続分はすべて均等になります。ただし、配偶者についてのみ5割加算されます。

 そうすると、法定相続分の割合は、あなたが5、長男、次男、長女がそれぞれ1=1.5:1:1:1(3:2:2:2)となります。わかりやすく分数で示すと、あなたが9分の3、子ども達が各9分の2となります。夫の遺産が3600万円ですので、あなたが1200万円、子ども達が各800万円を相続します。

 最終的な回答としては、あなた以外の相続人は、子どもたち3人となります。また、あなたの相続分は1200万円となります。

◆読者の方々へ
 読者の皆様の中には、韓国法に慣れ親しんでいないし、相続は大変だと思っていらっしゃる方がおられるかもしれません。今回のケースのように、亡くなった方が韓国籍の場合、韓国民法が適用されます。しかし、相続手続きに日本法を適用してほしいとの遺言があれば、日本法を適用することもできます。ご家族同士の紛争を未然に防ぐためにも、遺言の作成を一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
 

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