掲載日 : [21-07-07] 照会数 : 2283
隣家の木の枝越境してきた…勝手に枝を切れません
Q
私は住宅街の一軒家に住んでいます。お隣も一軒家で、そこには大きな庭木があるのですが、お隣は庭の手入れをしていないようで、庭木の枝は伸び放題。ついには土地境界上の塀を超え、私の家の敷地内にまで枝が伸びてきました。
この枝を切除してもらいたいのですが、お隣の許可をもらう必要があるのでしょうか。
A
現在の法律では、越境してきた枝を勝手に切ることはできません。もし勝手に枝を切除した場合、お隣から損害賠償を請求させるおそれがあります。
なぜこのような法律になっているのでしょうか。その理由は諸説あるのですが、多数説は樹木にとっては枝が重要だから、その切除は樹木の所有者にまかせるべき、と説明します。たとえば、枝をきれいに剪定した松の木や、立派な果実がみのっている果実樹などをイメージすれば、わかりやすいでしょうか。
◆まず隣家にお願い
このため相談者は、まずお隣に枝の切除をお願いし、自発的な切除を促すことになります。お隣が素直に応じてくれればよいのですが、もし応じなかったときは、残念ながら「相手方の費用で枝を切除せよ」という裁判を起こすしかありません。
なお、枝が電線に接触しているなど緊急性が認められる場合は、必要最小限の範囲で枝を切除することが、必要やむを得ない行為として許される余地もあります。ただし、こうした緊急性を認めた裁判例は極めて少ないので、勝手に切除することは原則として許されないものと考えるべきでしょう。
◆応じない場合は裁判に
このように、もしお隣が切除に応じなかったときは裁判によるしかないため、切除までに相応の時間と費用がかかります。これが非現実的なことは明らかなので、法律そのものが時代遅れといわざるをえません。
このため近いうち、法改正がなされる予定です。具体的には、相手方が切除請求に応じなかったり、空き家で樹木の所有者がわからないなどの事情があるときは、自ら枝を切除できるようになる予定です。
ただ、この法改正がいつ施行されるかは未定なので、切除については専門家と相談しながら検討したほうがいいでしょう。
弁護士 河景浩