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<訪ねてみたい韓国の駅28>デジタルメディアシティ・京義線ほか |
| 水色駅のホームから見たデジタルメディアシティ駅のホーム。歩くには微妙に遠く、電車としては近い | | テレビ局やIT企業が集まり、1日いても飽きないDMC。これはMBC本社ビルだ | | |
未来都市のユニークな駅 いかにも未来的な名前のこの駅は、なかなかユニークな存在だ。まず第一に、その立地。ソウルメトロ6号線、空港鉄道、KORAIL京義線という3つの路線のジャンクションだが、その敷地は広大で、ソウル特別市の恩平区、麻浦区、西大門区という3つの区にまたがっている。駅名は、メディアやIT企業が集まる未来型複合都市、デジタルメディアシティ(DMC)に由来する。ところが、DMCの最寄り駅は隣の京義線水色(スセク)駅なのだ。どうしてこうなったのか。
もともと、ここには昔から京義線が通っていた。水色駅の北側には水色洞の旧市街地が、南側には国鉄の車両基地と、ソウルのごみ処理場だった蘭芝島へ続く荒涼とした土地があった。1993年にごみ処理場が仁川の沖合に移転すると、蘭芝島一帯は生態環境やデジタルメディア産業が集まる未来型複合都市として再開発されることになった。そうして建設されたのが、ソウルワールドカップ競技場であり、DMCである。
2000年、ソウル地下鉄6号線が開業。京義線水色駅の東約500メートルの地点に、6号線「水色駅」が新たに設けられた。昔ながらの汽車が走る京義線水色駅とは離れており、別の駅とされた。
続いて2009年、京義線が電化されて、地下鉄と同じ通勤電車が走り始める。この時、通勤電車同士乗り換えができるよう6号線「水色駅」の上に京義線の新駅が設置された。ところが、従来の京義線水色駅も存続したため、新しい駅を「デジタルメディアシティ駅」と改称したのである。水色洞の市街地から6号線の駅まで歩くには距離がありすぎ、「水色駅」を6号線側に移転・統合することはできなかったのだろう。
こうした経緯から、京義線デジタルメディアシティ〜水色駅間は、鉄道としては異例とも言えるほど距離が短い。営業キロ上は0・6キロいうことになっているが、デジタルメディアシティ駅のホーム端から水色駅のホーム端までは350メートルしか離れていない。どちらの駅も、ホームの隣にKORAILの車両基地が広がっており、駅名標を見ないとどちらの駅にいるのかわからなくなるのもユニークだ。ちなみに、この両駅間の所要時間は45秒、運賃は1250ウォンである。
京義線デジタルメディアシティ駅で降りると、駅前に案内板があった。「(DMCの)テレビ局方面‥水色駅方面へ700m歩き、地下道をご利用ください」。その地下道とは、水色駅に隣接する通路だった。
1980年代の香り漂う市場や商店が並ぶ水色駅前から地下道を抜けると、ようやくDMCに出た。こちらは、ガラス張りの高層ビルが並ぶ近未来都市。地下道ひとつくぐるだけで、まるでタイムスリップしたかのような別世界である。最先端のIT技術を体験できるデジタルパビリオンや、韓国映画の歴史を学べる韓国映画博物館、人気ドラマをはじめ、韓流コンテンツを楽しめるMBCワールドなど多彩な施設があり、テーマパークのようだ。
韓国サッカーの殿堂、ソウルワールドカップ競技場や、ゴミの山を生態公園として再生したハヌル公園も徒歩圏内で、水色洞の在来市場と合わせ、ソウルの過去と未来を一度に体験できるエリアだ。それだけに、駅のわかりにくさがちょっと惜しい。
(栗原景・フォトライター) (2018.04.25 民団新聞) |
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