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サラム賛歌<15>ヘイトに似た状況が…
韓国在住の中国朝鮮族
朴蓮姫さん


 朝鮮族は中国の55の少数民族の一つとして、中国籍を持つ。1992年の韓中修交後、多くの朝鮮族が韓国を訪れた。長期滞在中の朝鮮族は80万人にのぼると言われる。その一人ひとりに、異なる事情や思いがあるはずだ。

 韓国に来て丸5年になる朴蓮姫さん(55)は、吉林省延辺朝鮮族自治州の州都、延吉で生まれ育ち、延吉市放送局に勤めていた。「中国の辺境の町しか知らない、井の中の蛙だった」と自らを称する。

 朴さんが韓国行きを決意した理由は、息子の大学進学だった。シングルマザーの朴さんは一人で、息子の学費や生活費を捻出しなければならない。放送局の給料だけではまかなえない額だ。仕事が軌道に乗った50歳の朴さんにとって、苦渋の決断だった。

 「食堂、モーテルの掃除、建築現場や家政婦など、韓国に来て、あらゆる仕事をやりました。日に12時間、多いときは14時間働いて、息子に仕送りする。そんな暮らしを3年続けたら、もう体がついていかなくなりました」

 やっとの思いで大学を卒業させた息子は今、中国で韓国企業に勤めている。  これからどうしようかと悩んだとき、偶然、韓国の国会議員の事務所で、インターンの仕事を紹介された。その後は、地域の多文化センターの仕事も任された。今は高麗人参の営業をしながら、週末には、韓国に住む同胞のための奉仕活動に力を注いでいる。

 朴さんの名刺の裏には、同胞モニタリング団団長、移住女性団体「チョガッポ」中国代表、在韓同胞文人協会副会長、ソウル市西南グローバルセンター通訳・相談員という肩書きが、ずらりと並ぶ。

 モニタリングは、ニュースやドラマ、映画などに登場する朝鮮族の姿を調査し、負のイメージばかりが強調されていないかをチェックする作業。

 「チョガッポ」は、韓国に移住した脱北女性や旧ソ連の高麗人、在日の女性らと定期的に集まって、互いの文化を紹介し合い悩みなどを相談する集まり。韓国人と結婚した中国の女性から、夫婦喧嘩で言葉がうまく通じないと、夜中に電話で通訳を頼まれることもあるという。どれもボランティアだと、朴さんは笑う。

 中国同胞新聞や韓国のテレビ・ラジオ番組に、韓国暮らしの機微を投稿したり、ブログで悩み相談にも応じる。それを通じて、朴さん自身も癒されると感じている。

 「でも、私の書くのは北韓式。分かち書きや単語の使い方まで、韓国式に直すのがとても難しくて、今も勉強中です」

 ところが自分の書いた記事に、心無いコメントをぶつけて来る読者が複数いることに驚いた。日本のヘイトスピーチと似たような状況が、韓国にもあるのだ。 「それを見て、韓国社会が病んでいることを感じました。まずは互いを知ることが大切です。韓国人が朝鮮族に近づこうとしないのなら、私たちの方から近づく努力をして、疎通しなくては。ここで韓国人と喧嘩したって、私たちは勝てるわけはない。静かに前に進むしかないでしょう」

 助け合い慰め合う仲間がいる韓国で、これからも暮らしていくつもりだと、朴さんは明るく話した。

戸田郁子(作家)

(2016.9.28 民団新聞)
 
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