あの「夕刊フジ」によれば、戦争法案の反対デモ演説で、ある大学教授が時代劇の決めぜりふをもじり、首相に対して「私も同じ気持ち。おまえは人間じゃない。たたき斬ってやる!」と痛烈に批判したという。 そのことが自民党内部で物議をかもした。いわく「首相を人間でないということは、安保法案に賛成の人は人間ではないということではないか」。続けて「仮に韓国の人に『お前たちは人間じゃない』と言ったら大問題になる。その意味では、典型的なヘイトスピーチだ」と。 批判の的は首相ら憲法を都合よく解釈し、強権的に「法案」を押し通そうとする勢力であり、「法案」賛成派の一般人を含むものではない。それを、拡大解釈し、一般人を巻き込むことで、問題をすり替えた。ここに、対立構造を煽る意図が見える。韓国を持ちだすなど論外だ。 問題になっているヘイトスピーチは、特定の民族に対して聞くも憚られ、見るに堪えない言動で差別を扇動する行為を指す。根絶すべきは、「韓国人殺せ」などの罵詈雑言を撒き散らすレイシストだ。 教授の批判が「暴言」だとしても、それとヘイトスピーチを同列に論じることは、味噌も糞も一緒にする思考停止のなせる業である。国会前の反対デモなど、自分らに耳触りなアピールをヘイトスピーチと短絡的に片づけるのも同根だ。 驚くべきことに、教授発言に噛みついたその人物は、ヘイトスピーチ対策の要職にある。国連から差別是正の強い勧告を受けても、差別禁止法案成立が遅々として進まない理由が、差別に鈍感な為政者の周辺にあるとすれば、それこそたたき斬られるべきではないか。(C) (2015.9.16 民団新聞) |