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サラムサラン<26> 歴史知らずの悲願
 日本人は歴史を知らなさすぎるとの声をよく耳にする。無論、ここでいう歴史とは、日本がアジアに帝国主義的な触手を伸ばした近代史をさすのだが、社会全体を俯瞰した場合、近代日本の負の歴史については、書籍や新聞など、それなりに情報はあるというのが私の実感である。

 それに比べ、圧倒的に情報不足なのが、近代以前の隣国の歴史である。興味が古代史と近代史に二分してしまって、たとえば500年続いた朝鮮王朝時代にどのような歴史があり、主役たちがいたのか、生き生きと伝えてくれる本はまず見当たらない。日本でいえば室町から安土桃山、江戸時代と、長い歳月の間に、隣国人がどのような生を積み上げてきたのか、甚だ貧弱なイメージしか持ち得ないのである。

 ところが、そうした旧弊を破る変化が起きている。韓流歴史劇のブームにより、ドラマを通して、隣国の歴史を身近に感じることができるようになってきたのだ。朝鮮王朝時代だけをとってみても、王や為政者ばかりでなく、名医や絵師、宦官や妓生、はては義賊や毒婦まで、実に多彩な人物像が絢爛たる歴史絵巻を描く。

 儒教という時代の強いた枠が堅固だったからか、規範を超えて人間が自己の道を生きようとした時、往々にしてイタリアオペラのような色の強い濃密な物語が紡がれる。

 視聴率競争にさらされているテレビドラマなので、史実からかけ離れた作り話も多いことだろう。大ヒットした「宮廷女官チャングムの誓い」にしても、「中宗実録」中の短い記録から想像の翼をひろげたフィクションなのだそうだ。

 その意味では注意は必要だが、ドラマの背景となる時代状況に、事実として見えてくるものは多い。何よりも、その時代への関心を呼び起こす歴史の覗き穴を提供してくれたという意味では、功罪のうち功が勝っている。韓流ブームが吹き払った「壁」はいくつもあるだろうが、歴史に関しても、新たな地平線を市民レベルで開いたといえないだろうか。

 10年ほど前、リュック・ベッソン監督の「ジャンヌ・ダルク」という映画を英国で見たことがある。英国支配に果敢に立ち向かったフランス乙女の話に眉をひそめる英国人など、誰もいなかった。

 映画を見ながら、ちらりと日本と韓国のことを思った。まだ韓流ブームが起きる以前のことだ。人々の意識に、なおも「壁」が高いように感じた。韓流時代劇の人気が、せめてヨーロッパ並みの風通しのよさを運んでくれることを、期待しないではいられない。

多胡 吉郎

(2010.6.30 民団新聞)
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