| 6校が合併して設立された吉林省立龍井中学校 | | 民族教育発祥の地に設立された大成中学校記念館と詩聖・尹東柱の詩碑 |
中国朝鮮族の故地 延辺自治州を訪ねて 代継ぎ自負心育む…漢族の進出で危機感も 発祥の地・龍井 朝鮮族同胞の民族意識は強烈だ。私が会った同胞たちは40歳から60歳前後の4世や5世の飲食店やホテルの女性オーナーたちだが、誰もが朝鮮族として生まれ育ったこと、そして悠久な民族文化を持つ後裔であることに強い自負心を持っていた。中国風、江原道風のイントネーションの人がいるものの、中国語と韓国語は自由自在だ。 私のような60代の在日2世が、それも韓食の世界化という民族的な事業に携わっているにもかかわらず、韓国語を流暢にこなせないことが不思議だと、会う人ごとに首を傾げられた。彼女たちの子どもも韓国語を話し、民族意識が強いという。朝鮮族の小学校で徹底した教育を受け、家庭での民族教育も欠かさないからだ。 彼女たちの民族意識の強さはどこから来たのか。民族教育発祥の地といわれる吉林省龍井市。その代表格の学校が今は記念館となっている大成中学校(1924年設立)だ。入口の説明書には、「龍井市は延辺地域の民族文化教育発祥の地、抗日闘争の策源地」「朝鮮族の私立学校は近代教育を実施する一方、抗日闘士の育成に注力することで民族解放運動の求心点となった」と記されている。 詩聖と尊崇されている尹東柱のコーナーをはじめ、民族学校の歴史、同校から輩出された抗日・革命闘士の偉業などの写真が200枚近く展示されている。幼少期から思春期にこうした歴史、教育目的を代を継いで教えられて育った同胞が強い自負心を持ち、民族意識が強烈なのも当然と言えば当然だろう。 村単位に1千校 しかし、昨今では中国語しか話せない青少年も増えつつあるという。中央政府の改革開放政策、韓中国交正常化にともない、民族共同体の中核地域である延辺にも人、モノ、カネが押し寄せ、移動が激しくなったことで大都市へ流出する同胞が増え、農村人口が激減(10%弱)したからだ。 朝鮮族の民族学校はもともと、移住者の多くが農民であったことから、農村の村単位に設立され、誰もが気軽に学校に通えた。が、農村人口の減少にともない村が徐々に消滅しはじめた。70年代に1000以上あった小学校が、89年には394校に減り、現在では200校を切るまでになった。 中学校も昔は郷単位で存在していたが、今ではほとんどが姿を消してしまい、逆に漢族の人口増と会社や企業の増加に比例するように「漢族学校」が急増した。 人口減に歯止め 地域によってはまるっきり民族学校に通えない児童が増え、また漢族経営の企業や会社の増加により、就職などの将来を見越して漢族学校に通わせる親も増えている。こうした内的および外的な要因により、韓国語を話せない青少年が増えるといった悪循環に陥っているのが実情だ。 漢族に対する朝鮮族の人口比率が逆転して久しく、現在では35・6%にまで減少した。自治州成立に必要な比率「30%」に近づきつつあり、自治州指導層が危機感を強めているのも当然だろう。 しかし、幸いなことに朝鮮族の人口減は昨年で下げ止まり、今年は増加に転じたようだ。指導層の中には、韓国の大企業が進出してくれば、人口の再増加もさほど困難ではないといった声や希望もある。果たして人口の増加が小中民族学校の再建につながるのか、そして韓国語を話せない青少年の増加を防げるかは疑問だ。自治州にもいよいよ存続と共同体意識の維持、発展に黄信号がともりはじめたのかもしれない。 (2013.11.6 民団新聞) |