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<民論団論>在日が体現する民族精神…李俊揆大使の光復節祝辞を読んで
貢献史を韓国教科書に
民団と公館が力合わせて


 光復節中央記念式典の会場で配布されるパンフレットには、中央団長と駐日大使の慶祝辞が掲載される。私が今回注目したのは、着任から間がない李俊揆大使の慶祝辞だ。新大使は在日同胞にどんな姿勢で臨もうとしているのか。慶祝辞はそれをうかがうに十分な、在日同胞に対する初めての公式メッセージとも言える。

 その慶祝辞は、在日同胞の境遇や心情を汲み取ったまとまりのある内容だった。誠意ある文章から新大使の前向きな心意気を感じとることができた。なかでも「祖国の光復と、その後の輝かしい発展を成し遂げた大韓民国を語る上で、(在日同胞)皆さんの存在を抜きに語れません」と強調した部分に着目したい。

 ▽1919年の2・8独立宣言は「3・1運動と上海臨時政府樹立の貴重な種子となり、祖国光復と大韓民国建国という実を」結んだ▽「6・25戦争時には、祖国から呼びかけもない状態で、642人の同胞青年たちが祖国を救うという信念一つで自ら戦場に」赴いた▽「1960〜70年代の経済発展、80年代のソウルオリンピック、90年代のIMF金融危機など、祖国の重要な時期毎に在日同胞は常に自発的に暖かい手を差しのべ、国家の発展と危機克服に大きく寄与」した。

 大使はこれらを集約し、「在日同胞社会とは、私たちの近現代史における民族精神そのもの」とまで称えた。これらは決して、過分な評価ではないと私は思っている。

 2・8独立運動を担ったエリート留学生たちと、解放後の在日社会を牽引した同胞たちとの間に格別な人的連続性があったわけではない。だが、6・25時の青年学徒義勇軍の決起は、2・8宣言の自己犠牲をいとわない先駆的精神を継承しつつ、それを優にしのぐものであった。

 漢江の奇跡を導いた輸出産業の育成、農漁村地域の改革に決定的な役割を果たしたセマウル運動への支援など、在日同胞の祖国貢献事例は枚挙にいとまがない。李大使はそれらを包括的に整理してくれた。

 民団を創立し、そのもとに結集した同胞たちは、祖国あっての自分たちであり、祖国の発展があってこそ自らの浮かぶ瀬があることを忘れたことはない。だからこそ、見返りを求めることのない献身が可能だったのだ。

 その根底には、在日社会が日本による植民地統治によって派生した存在であり、解放後も一貫して侮蔑や差別の対象であったことから、国権を奪われ辱めを受ける国に二度となってはならないとの強烈な思念がある。李大使はこれをよく理解されているものと私は確信する。

 呉公太団長は慶祝辞で「在日同胞の実態や民団の活動について知らない若い世代との民族的な絆を構築するために、本国の教科書に在日同胞の歴史を掲載するよう政府に働きかける運動」を展開しているとし、それは「日本にあっても、常に本国と一心同体でいたいという在日同胞の思いの発露」であると述べている。

 大韓民国と在日社会との関係を大きく前進させるために、李大使と呉団長が慶祝辞で示した思いを結合させるべきではないか。より率直に言えば、在日同胞の祖国貢献史を教科書に載せる運動は、民団と駐日公館の連携で進められるべきではないか。そう感じた同胞は少なくないだろう。

 韓国で「ヘル(地獄)朝鮮」「犬韓民国」といった造語が流布され、自国を極端に卑下する自虐的な風潮が広がって久しい。無条件に、一途に、祖国の発展を願い、祖国とともに歩んだ歴史に誇りを抱いてきた在日同胞にとってきわめて辛い現象である。

 内にせめぎ合いがあっても、外からのあなどりに対しては結束しなければならない。外勢によって屈辱を受けた歴史があるからこそ、この鉄則を鉄則として堅持できる韓国であってほしいと在日同胞は切望している。

 李大使をして「近現代史における民族精神そのもの」と言わしめた在日同胞の踏ん張りは、歴史教科書に記載するに十分な意味があるだけでなく、健全な歴史観を育む一助となるだろう。

 在日同胞社会と大韓民国は不可分であり、いわば連結決算体制にあるといって過言ではない。苦難を克服してきた歴史を共有することは、内外の国民・同胞が心一つに新たな地平を切り開く呼び水にもなるはずだ。

朴泰樹(70) 東京都・文筆業

(2016.8.24 民団新聞)
 
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