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鵲のこころ<1> 隔世の「近くて近い国」

 私が韓国の江原道にある翰林(ハンリン)大学で日本語を教えることになったのは、翰林大学に日本学科が開設された1992年のことである。 今でこそ春川(チュンチョン)といえば「冬のソナタ」の撮影地として日本でも知っている人も多く、韓流ブームが始まった2002〜03年頃には、翰林大学の近くにある「チュンサンの家」や、ペ・ヨンジュンやチェ・ジウの手形がある春川のミョンドンには、毎日1000人もの観光客が日本や中国などから訪れた。

 私が春川に住んでいるというと「羨ましい、行ってみたい!」という友人も少なくないが、92年当時は「なんでそんなところに行くの。大丈夫?」と本気で心配してくれた人もいた。最初は私自身も「2、3年、韓国で日本語を教えるのも楽しそう」と、軽く考えていたのだが、結果的には人生のターニングポイントとなった。

 私が韓国に渡った時には韓国語も分からず、日本人の知り合いも少なかったので、学生や同僚の先生方に支えられた部分が多かった。ソウルに行っても今のように日本人観光客が多く、あちこちで日本語が聞こえるような状況ではなかった。

 また、日本学科の学生も日本語を勉強しても、卒業後に日本語を生かした仕事につける機会はあまり多くなかった。

 あれから19年の歳月が流れ、翰林大の日本学科も多くの卒業生を輩出したが、今では99年に始まった日本‐韓国間のワーキングホリデイの制度を使って日本に行く学生も多く、卒業後ソウルにある日本の企業で働いたり、日本で就職をする人も出てきた。

 私は、2010年3月から1年間、サバティカルで東京大学の客員研究員として日本に滞在する機会を得たのであるが、先日、卒業生のA君から日本の自宅に電話がかかってきた。「先生、お久しぶりです。僕、卒業してすぐ日本に来て日本で就職しました。B君もすぐ近くで仕事をしているんですよ。先生が日本にいらっしゃると聞いて電話しました」という。  後日会って食事をしながら話を聞くと、A君は苦労の末支店長として頑張っており、B君も卒業後ずっと日本で働いているという。また、韓国の男性と結婚してソウルの郊外で生活しながら韓国の大学で日本語を教えている日本の教え子もいる。

 こんな教え子たちをみていると、今や日本と韓国は、本当に「近くて近い国」になったのだと実感する。

 今後、このコラムでは私の韓国での生活や経験を通して、現代の韓国社会や文化、言語、韓国から見た日本などについてお伝えしていきたい、と考えておりますので宜しくお願い致します。

齊藤 明美

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プロフィール

 齊藤 明美(さいとう・あけみ) 駒沢大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学(国語学)、高麗大学校大学院国語国文学科博士課程修了(韓国語学)ほか。現在、東京大学大学院総合文化研究科客員研究員、翰林大学校日本学科教授。著書に『国語学概説』(共著、双文社出版、88年)、『日本語教師として韓国へ‐ごく普通の韓国入門』(乃木坂出版、95年)など多数(韓国語、日本語)。

(2011.1.12 民団新聞)
 

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