韓国の最大野党・民主党の幹部が朴槿恵大統領と安倍晋三首相を指して、「この世に生まれてはならない『鬼胎』の子孫が皮肉にも首脳の座にいる」と国会記者団に宣ったのには耳を疑った。大統領の父・朴正熙氏(元大統領)と首相の祖父・岸信介氏(元首相)が旧満州国にかかわったこと、2人とも「歴史の真実を否定する」ことなどを理由にしている。 日本や韓国の政治家による暴言や妄言には麻痺気味の頭で考えても、民主主義的手続きで就任した国政トップを論難するのに、血筋を持ち出すのはあまりに愚かであり、たちが悪い。韓国の政治家の水準をあからさまにした恥ずかしさ。嫌韓発言をこととする日本の政治家にまた一つ好材料を提供した悔しさ。歯ぎしりするほかない。 昨年の大統領選挙に不正操作があったと主張し、敗北をいまだ受け入れないその問題幹部は、鬱憤晴らしをかねて仲間に「勇気」を見せたかったのか。キレやすい人は往々にして表現力が乏しいと言われる。だが、その幹部に知性やユーモアがないわけではなかろう。 同じような考えを持つ人たちだけで話し合うと意見がだんだん極論に傾き、仲間どうしで過激さを競うようになっていく。「朝鮮人を殺せ!」などと叫んで街頭に飛び出したヘイトスピーチ集団がその典型だ。問題の幹部は、大統領選挙敗北の責任を問われた旧主流派に属すという。仲間内で「朴槿恵憎し」を増幅させていたのだろう。 その幹部の血筋は問わない。しかし、国格を代表する政治の場で「鬼胎」などとおどろおどろしい言葉を公然と吐かせるような土壌を除染しなければ、未来までが汚染される。(J) (2013.7.17 民団新聞) |