2020年の夏季オリンピックとパラリンピックの招致を目指す東京都の動きが活発で、メディアも盛り上げに懸命だ。民団にも都の担当者が「宜しく」と挨拶にきた。都民が願うことなら招致を成功させて欲しいと思ってはいる。しかし、どうも、しらけた気分が抜けない。言い出しっぺが前都知事の石原慎太郎さんだったからだ。 障害者に対して辛辣な発言をいとわず、ことあるごとに韓国や中国を敵視し、尖閣諸島の国有化パフォーマンスで日中関係悪化の原因をつくった張本人である。それだけではない。00年には、いわゆる「第三国人」が騒擾を引き起こす可能性があると自衛隊駐屯地で演説し、防災の日には銀座に装甲車を走らせ、上空には対戦車ヘリを旋回させ、東京湾に自衛艦を浮かばせた。災害に乗じて外国人の騒擾が発生したとの想定によるこの治安出動訓練に、国際社会も驚いた。 夏季五輪ともなれば、石原氏の嫌いな中国人や韓国人のほか、貧しい途上国からもたくさんの人が来る。彼の目には、その一部が不法滞在者となり、治安を乱す種がまき散らされると映って不思議はない。 東京招致のウリ文句に「世界で一番治安のいい都市」というのがある。石原さんはもしかして、自分が「統治」したことで治安状況が劇的に改善したと自画自賛しているのだろうか。まさか。東京の治安は一貫して良好であり、石原さんは外国人に対する非寛容さ、五輪に最も不適切な性癖を露呈したに過ぎないのだ。 少なくとも、新知事の猪瀬さんは何らかの形で、東京が外国人に寛容な都市であることを宣言すべきだろう。(D) (2013.1.16 民団新聞) |