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民団は何をめざすのか<下-2>

就任要件すべて緩和が筋

「青年・学生」「地方」焦眉の課題


◆国籍条項開放、根強い拒否感
 民団が在日同胞の大統合に踏み切った。そして、在日同胞社会の大統合と国籍条項の開放は表裏一体である。しかし、団員資格としての国籍条項は撤廃されたが、秩序ある変革と組織防衛の観点から役員・任員の就任要件は規制されつつも、徐々に緩和されてきた。現在、規制されているのは中央本部(傘下団体含む)の全ての役員と顧問、地方本部の3機関長となっている。

 本来、団員として認めたからには、権利と義務は平等であるべきで、特別かつ、合理的な理由がない限り、規制があってはならないのが原則である。いずれ、近い将来に規制は全面的に開放されることになるだろう。しかし、今日においても国籍の開放に強い拒否感を持っているのも現実である。

 国籍を論ずる際に真っ先に出されるのが綱領の「国是の具現」、と相いれないという点である。この点は、国民儀礼、大韓民国民団という名称とも関連すると思われる。まずこの点を論ずるならば、象徴的な意味が強いということと南北分断の影響を考慮した上で考えなければならない。その上で我々はルーツをどこに求めるかということである。分断されていない統一国家が存在すれば躊躇なくそこにルーツを重ね合わせていくことになる。しかし分断されている現実にあって私たちは選択を迫られる。そして私たちは大韓民国を選択したのである。

◆韓民族の一員に国是具現は当然

 「国是の具現」、国民儀礼、団体名称のいずれも民族の象徴であり、忠誠の対象ではあるが、いずれも可変的であり、当面のという但し書きを加えておく必要がある。さらにここで問題とされるのは国家への忠誠は唯一絶対であり、国籍と不可分だという勘違いである。国民としての義務というのはあるが、唯一絶対な忠誠というのはない。多重国籍の時代にあって、国家への忠誠は多重であってもなんら違和感はない。たしかに敵対する国家間においては軋轢があり得るが、現実的には考えにくい。

 そもそも「国是」とは憲法の前文に記される建国の理念を言うのだが、韓国の憲法の前文を要約すると以下のようになる。

 ▼悠久の歴史・独立運動・民主理念の継承、民主改革と平和統一の使命、正義・人道及び同胞愛による民族の団結、自由で民主的な基本秩序▼すべての領域における各人の機会均等、自由及び権利に伴う責任と義務の完遂、国民生活の均等な向上▼世界平和と人類共栄への貢献。

 要するに民族の歴史の継承、民主改革と平和統一の使命、自由民主主義基本秩序、基本的人権、世界平和と人類共存が謳われているのが韓国の「国是」である。つまりはこの国是に賛同し、具現に努めるかどうかということであり、韓民族の一員であればこれに反対する理由はない。

 次に反対意見としてよく出されるのが、「国籍を開放しても、それによって組織が強化されたという実感はなく、これ以上開放する必要はない」という主張である。

 この点については二つの反論がある。一つは現に韓国籍以外の組織幹部、団員が数多く民団に参与しているという事実である。仮にこの人たちが組織から外れたとなれば、どういう事態になるか容易に想像ができる。

 青年・学生組織ではたちまち半減し、組織運営は成り立たなくなる。民団組織も例外ではない。

 二つ目の反論は、今日まで彼らに対する積極的な働きかけをしたことはなく、「来るものは拒まず」の対応で一貫してきた。その象徴が役員の就任規制である。当人達からすれば「入れてやるからありがたく思え」と言われているように感じるだろう。屈辱以外の何物でもないはずだ。

 最後に、日本国籍者では組織の代表性が問われるという主張である。そもそも韓国籍者の代表ではない。民族団体である民団の代表である。支部団長はすでに就任要件は撤廃されている。だとしたら、「支部団長は代表ではないのか?」ということになる。

 よく例に出されるのが地方参政権のために自治体の首長と面談した際に日本国籍では都合が悪いという論調だ。だが、日本国籍者が同族である韓国籍者に地方参政権を付与してほしいと要請することが、どうして都合が悪いのだろうか。ある面では韓国籍者が言うよりさらに強い発言力があるに違いない。本人もそうだがその背後には多数の選挙権を持つ団員がいるのだから。

◆過疎地方本部の健全化はいかに

 再度繰り返すが、組織の秩序ある改革、組織防衛の観点から就任規制の開放は慎重でなければならない。だが慎重が度を越して現実から遊離し、組織防衛どころか組織の劣化を招くようでは本末転倒になる。その観点から組織の現状を見るに以下の三点において就任規制が障害となっていて早急な是正が必要である。

 中央本部顧問、青年・学生組織の中央本部会長、地方本部3機関長がそれである。以下にそれぞれの状況について述べる。

 中央本部顧問は諮問機関であり、組織的に重要な決定権はない。組織運営のための幅広い意見を収集することは組織に多大なメリットとなる。加えて、有力な人士を顧問に推戴することで本人の参与意識が生まれ、多面的な貢献を期待することができる。さらに象徴的な意味で民団組織の開放性をアピールできる。

 青年・学生組織については、すでに日本国籍または重国籍者が各組織の構成員の過半数を占めている実態がある。青年・学生層は国籍が相互の関係において障害はなく、自然体でお互いを認め合うという新たな意識、認識、関係が生まれている。

 そもそも日本国籍者として青年・学生組織に参加している者の多数は自身で帰化による日本国籍を選択したのではなく、生まれながらにして日本国籍取得者である。このような関係は在日同胞社会のあるべき姿を暗示している。

 既に新たな状況と関係性にあって組織を運営している青年・学生組織に旧来の規制を放置しておくことは、無用な軋轢を与え、組織の正常な運営に障害となる。

 現に学生組織においては韓国籍者の団体長を選任できず、組織の存亡にかかわる事態もあった。日本国籍者が多数になりつつある中、代表者に選任できないという要件はいかにも不合理である。これは差別とも捉えられ、組織防衛の枠を超えている。

 差別と闘ってきた私たちの組織にあってはならないことである。青年・学生組織は有能な人材を幅広く発掘し育成することで在日同胞社会、民団組織の将来が保証される。就任規制が青年・学生たちの参与意識を削ぐことは明らかである。

 地方本部、特に過疎地方においては、3機関長はおろか、役職員のなり手にも事欠いているのが実情だ。現在の規約では、居住同胞数2500人以下の地方本部を過疎地方本部と規定しており、24地方本部がそれに該当する。

 そして民団組織が抱える組織的課題の多くはこの過疎地方本部の問題でもある。そもそも過疎地方本部とそれ以外の地方本部を同列に論ずること自体に無理があり、過疎地方本部に対する別途の対策が必要である。

 3機関長の就任要件の緩和は勿論のこと、3機関制、3選禁止条項、兼任禁止なども合わせて改正する必要に迫られている。加えて言えば、過疎地方本部が抱えている問題を解決することは、組織的問題の大半が解決するということでもある。(おわり)
(林三鎬)
(2018.02.14 民団新聞)
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