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<民論団論>連動する日本の「経済」と「歴史」…金慶春(48)兵庫県・団体役員
ASEAN+3の首脳会合で手をつなぐ朴槿恵大統領と安倍晋三首相=11月13日

攻勢受ける韓国
国民統合の弱点どう補う

 この間の国際外交舞台で、韓日、日中の首脳どうしにともかくも対話があり、韓日中3国首脳会談を復活させようとする動きも活発になってきたようである。そう遠くないうちに3国首脳会談はもちろん、2国間の本格的な首脳会談も実現するのだろう。

 実現すれば、安全保障や経済の分野で最悪の事態に至る可能性を減らすことができ、さらには関係改善への環境を整えることができるかもしれない。そうだとしても、韓日中3国が絡み合い、時に「戦争」とまで称される経済・歴史をめぐる角逐は、むしろより熾烈になりかねないと懸念している。

韓・中を挑発し国民の結束図る

 心配なのは韓国である。先端科学技術開発・輸出競争力・資源確保など各要素を総合する経済力で、日本にはなお追いつけず、中国からは猛烈に追い上げられているからだ。

 韓国はその中国と歴史認識では一脈を通じてはいるが、経済依存度がきわめて高いがゆえにつきまとう苦労もはんぱではない。

 中国の経済成長は、韓国に輸出拡大の恩恵をもたらす半面で、世界での韓国の居場所をせばめる働きもある。さらに韓国は、民主化と少数民族問題という爆弾を抱える中国が、いずれ大きな混乱に陥る可能性にもおびえねばならない。

 韓国は建国以来抱える北韓リスクとともに、こうした中国リスクをヘッジするためにも、日本との密接で安定した関係を築く必要がある。しかし残念ながら、旧慰安婦や独島領有の問題、東海(日本海)の呼称や文化財返還の問題などをめぐる両国間の葛藤は強まる一方のようだ。

 これら、隣国としての関係あるいは歴史認識にもとづく対立は、2国間のやり取りの次元を超え、急速に国際化してきたとも言える。その宣伝合戦は「歴史外交戦争」と呼ばれてもしかたない状況にある。たとえ首脳会談が成功裏に行われても、終戦は言うまでもなく、停戦すらままなるまい。

 この「歴史外交戦争」にレフェリーがいるはずもなく、どちらが勝ったとか負けたとかの判定は下されようもないが、国の在り方や国力はかなりの影響を受けるだろう。

 安倍晋三政権を私は、「経済」と「歴史」を連動させる特異な政権だと見ている。

 安倍政権はこの間、「失われた20年」を取り戻すべく、国際競争力のあるグローバル企業を「日本経済の旗手」として国民がこぞって応援し、世界で勝利しようとの意識を浸透させてきた。そのシェア争いのライバルである韓国、中国に対する歴史や領土問題での強い態度は、それと深くかかわっている。

 グローバル企業は実態が無国籍でありながら、自らの経営努力によって負うべきコストを国民国家の「国民」に押し付け、利益だけを貪欲に確保しようとする性向をもつとされる。その「国民」は増税、所得格差の拡大、不遇な若者の増加、福祉の切り詰めなどで苦しんでいる。

 不満や不安を抱える「国民」に負担を強いるには、精神面から結束させるほかない。「自分たちは日本人だ。優秀なんだ」という雰囲気をつくり、不遇な若者ほどもっている「つながりたい」思いをかき集めようとする。

 安倍政権は靖国神社参拝、河野談話の見直しなどで韓中両国を挑発してきたが、米国や欧州諸国から批判を受けるなど外交的に大きな損失はあっても、その代償として「韓中何するものぞ」といった心もちを国民が共有してくれればそれでよしとする計算があるのだろう。

 内外から警鐘が鳴らされてもその響きは弱く、日本の政官財民各界はすでにその方向でまとまり、容易には変わらないように見える。モラルに即した長い目で見れば、歴史修正主義と経済振興策が結びついた日本のこの路線は成功するとは思えない。だが、日中にくらべて小さく弱いうえに、経済面でも勢いを失いつつある韓国を揺さぶるには十分だろう。

日本政府の動向冷静に見極めて

 韓国は日本と比べて国民的統合が容易ではない。日本では、アジア侵略や敗戦は遠い過去のことであるのに対し、韓国にとってそれと不可分な解放・分断・建国の経緯は歴史認識の葛藤を再生産し、いまも国論分裂の地雷原であり続けている。

 韓国は北韓に操縦される従北勢力を抱えるだけでなく、対日姿勢でも合理的な判断をする人々と政治・感情的に「反日」をこととする集団がある。しかも、いわゆる「反日」の一部は一方で、従北勢力とつながっている。

 韓国の対日姿勢は、日本の対韓姿勢に比べてまとまりにくい宿命的な要因をもっているのだ。「歴史」で日本に勝てず、「経済」で低迷を続けることになれば、国の亀裂が広がりそれは国力の消耗を招くことになる。

 過去とは違い、「歴史」は日本が韓国を挑発し、揺さぶる武器となった感がある。韓国は日本の狙い、出方を冷静に分析してほしい。世論を導く情勢分析・研究機関、メディアの役割がこれまで以上に重要になる。多くの面で日本と競い合わねばならないのに、植民統治時代の残響に振り回されるとすれば、これほど情けないことはない。

(2014.11.26 民団新聞)
 

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