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読みたいウリ絵本<15>絵本の可能性 広がれ
文 ユン・ソクチュン 絵 イ・ヨンギョン 訳 かみや にじ 出版社 福音館書店
図書館の壁に描かれた女の子

 韓国の人たちは詩が大好きです。街にも詩があふれています。ソウルの地下鉄のホームにある安全扉。だれかが書いた詩がガラスに書かれていて、電車を待つ間に読むことができます。テレビでも、タレントや市民が自分のつくった詩を披露している場面をよく目にします。詩が生活のなかに息づいているのですね。

 国民から愛されてきた童詩や童謡に絵をつけて、絵本にしてみるのはどうだろうか? 韓国の老舗出版社チャンビは、絵本のさらなる可能性を広げようと、これまでになかった画期的な企画を考えます。それが、「ウリ詩絵本」なのです。 シリーズのはえある第1巻は2003年にでた、済州島の言葉遊びの歌を絵本にした『しろいは うさぎ』(第12回で紹介)でした。それから何と、11年もかかって2014年に第15巻の『こいぬとこやぎ』(日本語訳未刊)でようやく完結をみました。

 シリーズには、韓国を代表する画家たちが多数参加したということもあって、日本で翻訳出版されたものが結構あります。今回はそのなかから、シリーズの第3巻としてでた『よじはん よじはん』を紹介しましょう。

 この詩を書いたのは、韓国を代表する童謡詩人、ユン・ソクチュン先生です。先生は13歳から詩を書きはじめ、約1300作を残しました。そのうちの半数以上が童謡となり、「ナリナリ ケナリ」、「昼にでた半月」など、韓国人ならだれでも知っている童謡の作詞者として有名です。また、ユン・ソクチュン先生は、子どものことを「オリニ」と呼ぶことを普及させ、「オリニの日」を発足させたパン・ジョンファン先生亡きあとその遺志を引き継いで、解放後の韓国児童文学の発展に大いに尽くされた方でした。

 さて、内容です。まだふつうの家に時計がなかった時代のお話です。家事や育児に忙しいオンマが、幼い娘に「今、何時か聞いてきて」と頼むところから話がはじまります。女の子は近くのお店にいって、

 「おじさん おじさん

 いま なんじ

 かあさんが きいてきてって」とたずねます。

 「よじはんだ」

 お店の主人は教えてやります。女の子はすぐに家に帰って、早くそれをオンマに伝えなくてはいけないのですが……。ニワトリ、アリ、トンボ、オシロイバナに出会ってしまいます。道草をいっぱいして、日がとっぷりと暮れたころにようやく家にもどり、

 「かあさん かあさん

 いま よじはん だって」と知らせるのです。

 絵を描いたイ・ヨンギョンは、ユン・ソクチュン先生が詩を書いた時代よりも少し下げて、1960年代の田舎の風景を念頭に描きました。彼女がつくりだした主人公の女の子の、何とも愛らしいこと!

 わたしは韓国のオリニ図書館で多くの講演を行っていますが、写真のように壁や柱に描かれたこの主人公と出会うことがしばしばあります。絵も高い支持を得ているのです。原書の画家プロフィールには「絵本の主人公は先生とうりふたつです」と書いてあるんですよ。これもまた、微笑ましいですね。(絵本作家)

キム・ファン(絵本作家)

(2015.4.22 民団新聞)
 

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