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サラム賛歌<14>中国朝鮮族の歴史を残す
写真家
柳銀珪さん


 私の伴侶である写真家の柳銀珪(54)は、これまで20年余りにわたって、中国の朝鮮族を撮影したり、古い写真を集める作業を続けてきた。わが家には朝鮮族の資料写真や記念写真などが5万点ほどあり、その整理を続けていくことも、これからの私たちの大切な仕事の一つだ。

 古い写真を年代別に整理した大規模な展示を、2000年にソウルの世宗文化会館で行った。92年の韓中修交後、多くの朝鮮族が韓国にやって来るようになった。しかし彼らの移住と定着の歴史に関心を持つ韓国人は、それほど多くはなかった。

 それは朝鮮族も同様だった。なぜ自分たちが中国の少数民族として存在しているのかを、認識している人は少なかった。

 柳は1993年から、抗日独立運動家の遺族を撮影するため中国東北地方を回った。同時に、個人の手元にある古い写真を蒐集した。「なぜそんなことをするのか」「古い写真が金にでもなるのか」と、様々な疑問をぶつけられた。

 「朝鮮族の村で、家々に飾られた家族写真が目にとまった。韓国でも昔は1枚の額縁に、小さな家族写真を何枚もはさんで飾ったものだ。

 老人に昔話を聞くうちに、自分が死んだら写真も焼かれてしまうと耳にして、驚いた。フィルムもない古い写真は、焼かれたら、もう二度と見ることはできない。それがなんとももったいなくて、古い写真を集めるようになった。

 個人の所有する記念写真は、たんなる思い出に過ぎないが、それらを集めて並べてみると、過ぎた時代を映す鏡となることを知った」

 文化大革命の時代には、朝鮮の民族衣装を着た服や朝鮮語の手紙などが紅衛兵に見つかると、「特務(スパイ)」という汚名を着せられ、殴られた。それを恐れて、古い写真や資料がたくさん焼かれたことも知った。この世に存在していた写真がなくなってしまう……。写真家として、いてもたってもいられない気持ちで始めたことだった。

 柳の作業を遠巻きに眺めていた朝鮮族の中に、やがてこれは自分たちがやるべき仕事であると認識する者が出て来た。10年ほど前からだったろうか。旧満洲に点在する朝鮮族文化館などで、古い写真を集めた展示を行ったり、写真を使った資料を刊行するようになった。写真の焼失を防ぐことができたと、柳は安堵している。

 今年8月から10月末まで、仁川の開港博物館企画展示室で『満洲アリラン 朝鮮族ディアスポラの暮らしと記憶』展を開催中だ。解放前までの古い写真を使って、朝鮮族の移住と定着の歴史を解き明かし、柳銀珪の撮影した抗日遺族たちのポートレートを展示した。

 この展示には連日、200人余りの観覧客がある。韓国に住む朝鮮族が80万人とも言われる現在、隣人への関心が高まったことを私たちも実感している。

 仁川官洞ギャラリー(金土日開館)では10月16日まで、90年代半ばに柳銀珪の撮影した朝鮮族の写真展を行っている。韓国との関係が深まる以前の彼らの表情や服装などから、断絶していた時代の暮らしを感じ取ってもらえたらと願っている。

戸田郁子(作家)

(2016.9.7 民団新聞)
 
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