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<布帳馬車>ほろ苦い一枚の写真

 一枚の写真がある。敬虔なクリスチャンのアボジが47歳で、在日大韓キリスト教会の長老に就任した1972年当時のものだ。親族らが教会に集まり、第二の門出を祝福した。

 指紋押捺拒否やNHKを相手に「韓国人の名前を正しく読め」と裁判で闘った若き日の崔昌華牧師の姿もある。私は大学受験を半年後に控えた高校3年生で、実に不機嫌そうに一番前に正座している。「在日」だとか、「教会」だとか、私を取り巻く環境すべてが嫌で仕方なかった思春期の顔そのものだ。

 その数カ月後に我が家が全焼し、私以外の家族がこの教会に身を寄せることなぞ、「神のみぞ知る」だった。オート三輪を運転中の踏み切りでの列車事故で、九死に一生を得たアボジに神はまたも試練を与え、私は「世の中に神などいるものか」と絶望にうちのめされた。

 受験をあきらめるとアボジに告げたところ、「学問を身につけなければ、いつまでたっても日本人に頭があがらない。長男のお前だけでも大学に行かないと、弟らにしめしがつかない」と説得され、極めつけに「教育の場を奪われた1世の夢をかなえてほしい」と哀願された。

 在日の歴史を初めて意識した瞬間だったように思う。「親孝行しなければ」と心機一転。伯父宅に居候しながら、高校受験を控えた従兄弟が寝た後に机にかじりつく日々が続いた。

 第一志望校に振られて挫折は味わったが、入学した大学に韓国社会文化研究会(韓文研)という同胞サークルがあった。運命的としか言えない出会いが、本名で生きる今の私の土台になったことを思えば、「やっぱり神様はいるのだ」と思わせるほろ苦い一枚である。(C)

(2015.3.25 民団新聞)
 

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