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<訪ねてみたい韓国の駅30最終回>ソウル・京釜線ほか |
| ソウル路7017から一望できる正面が旧駅舎。ロッテマートをはさんで左が新駅 | | 舎赤レンガ駅舎の歴史を伝える旧理容室跡 | | |
歴史伝える赤レンガ駅舎 赤レンガの駅舎が、行き交う人々を見守っている。
韓国の鉄道の玄関、ソウル駅。1925年に竣工した赤レンガの旧駅舎は、2003年11月、新しい駅舎に役割を譲ってから、しばらく放置されていた。文化財庁に所有権が移され、複合文化空間「文化駅ソウル284」に生まれ変わったのは、2011年のことだ。酔っ払いがたむろしていた正面玄関も、今はすっかりお化粧直しした。
長年ソウル市民に親しまれた駅舎は、日本人建築家・塚本靖とドイツ人のゲオルグ・ラランデの共同設計によるものと推定されている。オランダのアムステルダム中央駅やフィンランドのヘルシンキ中央駅を手本として設計されたという説が有力だ。
塚本は、東京駅の赤レンガ駅舎を設計した辰野金吾に師事した建築家で、どこか東京駅に似た雰囲気も備えている。
どこか東京駅の面影も
駅舎に入ってみよう。普段は内部が無料で公開されており、ソウル駅の歴史などを見学できる。正面の入口から入ると、そこは広い中央ホールだ。左右に並ぶ窓口は開業当時のきっぷ売り場で、今はイベント開催時のチケット売り場などに活用されている。ドームのてっぺんには美しいステンドグラスが設置され、入口の上部には現役時代と同じ時計が時を刻んでいる。
中央ホール右手の部屋は、旧三等待合室。現在は、企画展などの展示スペースとして使われている。筆者がソウルで暮らしていた2001年当時は、前売り専用のきっぷ売り場だった。高い屋根や格調高い照明などが印象的で、この部屋に入ると「これから韓国の旅が始まるんだ」と胸が躍った。
ホール左手には、一、二等待合室や、高貴な方が利用した貴婦人待合室、貴賓室などが並ぶ。階段を上がると、そこは旧理容室や大食堂といった付帯施設があった場所だ。こちらは、言わば常設展示室で、竣工時から使われてきた外壁の赤レンガや壁の構造などを展示・保存している。2001年当時は、鉄道博物館の展示室となっていた。信号装置など、展示されていた鉄道の道具は日本のそれとほとんど同じ。鉄道ファンとしてワクワクする一方、韓国の文化と歴史を学ぶ者としては、複雑な気持ちだった。
駅前に戻り、駅の東西を結ぶ遊歩道に上がろう。高度経済成長時代の1970年に開通した高架道路を、市民参加のプロジェクトによって2017年にリノベーションした「ソウル路7017」だ。
エレベーターで遊歩道に上がると、素晴らしい眺めが待っていた。広々とした敷地に並ぶ、新旧2つの駅舎。韓国の玄関・ソウル駅の全景を、高い視点から一望できる。旧駅舎の左、南側に見える建物が、現在の駅舎だ。ガラス張りの開放的な建物で、釜山方面への高速鉄道をはじめ、毎日多くの列車が発着している。その地下には、都心と金浦・仁川各空港を結ぶ空港鉄道が乗り入れた。
乗降場の機能も復活
100年近い歴史を誇る、赤レンガの旧駅舎と、韓国の公共交通の要衝として発展を続けるガラス張りの新駅舎。ソウル路7017からは、韓国の鉄道の歴史と今を、ひと目で見渡すことができる。
昨年11月、京義線の乗り場が旧駅舎側に移転し、旧駅舎が14年ぶりに列車乗降場としての機能を取り戻した。2つのソウル駅舎は、これからも韓国の街と鉄道を見つめ続けることだろう。
栗原 景(フォトライター) (2018.05.16 民団新聞)
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