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読みたいウリ絵本<9>ウサギさん、愛されるわけ
文と絵 イ・ホベク 訳 黒田福美 出版社 平凡社
フランス語版

 あなたの知っている、ウサギが主人公の名作絵本といえば? もしもこんな質問を受けたならば、みなさんはどんな絵本のタイトルをあげるでしょうか。

 イソップの『ウサギとカメ』は当然で、ビアトリクス・ポターの『ピーターラビット』や、ディック・ブルーナの『ちいさなうさこちゃん』も、かなり有名ですからあがるでしょう。ガース・ウイリアムズの『しろいうさぎとくろいうさぎ』も、愛の絵本としてよく知られていますよね。

 さて、まったく同じ質問を韓国の人にしたならば、おそらく多くの人たちが一番に、今回紹介する『うさぎのおるすばん』の名をあげることでしょう。

 このように韓国で圧倒的な支持を得ている今回の絵本について話すには、作者と当時の韓国の現状から話さなければいけませんね。

 1980年代、イ・ホベクがソウル大学の学生のころでした。日本に滞在していた親戚から、世界的に有名な絵本作家、トミー・ウンゲラーのイラスト画集をプレゼントされます。イはそのときの感激を、つぎのように語っています。

 「わたしは世のなかに、こんなに面白い絵があるということをはじめて知り、それから彼のファンになりました。

 その画集には彼の絵本の絵がいくつか載っており、このような絵をどうやって描き、また、このような絵が載った絵本がどのような本であるのか、知りたくてたまりませんでした」

 すぐに教保文庫の外国書籍コーナーにいって、憧れのトミー・ウンゲラーの『ヘビのクリクター』を購入します。そしていつか、自分も絵本をつくる仕事に携わりたいという思いを強くしていったのでした。

 当時の韓国は、海外の優れた絵本が簡単に読める環境ではなかったのです。

 やがてイに、フランスに留学するチャンスが訪れます。おかげでトミー・ウンゲラーの絵本をすべて読むことができただけでなく、数多くの世界的な名作と出会えたのでした。

 93年に帰国したイは、児童書専門出版社で企画と編集の仕事をするかたわら、94年には自身が代表を務める絵本企画会社「チェミマジュ」を設立し、やがて出版社へと発展させていきます。

 韓国の絵本が質的な変化を果たすのは、90年代の半ば。まさにその最前線に立っていたのが、イ・ホベクであり、彼が文と絵を担当し、自らの出版社で00年にだしたのが、ほかでもない今回の絵本なのです。

 おやおや、ベランダのガラス窓のカギがあいていたみたい。ウサギはこっそり窓をあけて、だれもいないお部屋に入ってきます。

 ペットのウサギはベランダから、いつもみんながやっていたことを見ていました。今夜は、だれも帰ってこないはず。とうとうやりたいことがやれるチャンスがめぐってきたんだ!

 家族がいない部屋で、ウサギはいろんなことをはじめますが……。

 この絵本は、アメリカ、フランス、イスラエルでも発売されていて、特にアメリカでは、03年のニューヨークタイムズ(NYT)の「年間最優秀絵本」に選ばれました。

 日本語の翻訳は、芸能界きっての韓国通、黒田福美さんが担当していますよ。

キム・ファン(絵本作家)

(2015.2.4 民団新聞)
 

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