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世界遺産へ友好の道…ソウル〜東京21世紀の朝鮮通信使<2>
永川市の歓迎会では全員が手をつないで輪になり「アリラン」と「故郷」を合唱した
高校生らも加わり総勢202人でウオーク(永川市)
韓国でのゴール・釜山で抱き合って喜びあう
心のこもった差し入れ最大のパワー源に
なぜ歩く?自問自答…苦しい時の助けにほっこり


4月11〜24日

 【11日】醴泉‐安東34キロ、雨のウオークになった。雨対策1番のポイントは靴のカバー。今回はさまざまなカバーグッズによる対応や個性美豊かに「手作り」のカバーが目立つ。今日もまた桜並木のウオークだが散り始めた花びらが路上にたまっている。ゆるやかだが長く続く峠道を上りきる。この「百峠」は朝鮮時代、醴泉で牛を売った安東の農民が盗賊に襲われぬように集団で峠越えしたことに由来するそうだ。安東の昔の役所「東軒」にゴールすると、権寧世市長が出迎え、歓迎してくれた。

 【12日】この日は安東歴史探訪日。

「戦友」との再会

 【13日】安東‐義城33キロ、各地で警察官のサポートがあるが、安東では李東植さんが2日間にわたり、自ら先頭を歩くガイド役も担い、ウオーカーを感激させた。

 昼食時、前回韓国戦争を戦った「戦友」と出会った金承南さん(83)が金重圭さん(92)と再会し、「懐かしいですよ」と再び昔話を語り合った。「また次回に会えればいいね。元気でね」と握手した。さわやかな再会にはほかのウオーカーも目をうるませていた。

 【14日】義城‐義興26キロ、だいぶ南に来たのを実感するのが果樹園のナシの白、モモのピンクなどの果物の花の色だ。畑に広がるニンニクやタマネギの葉の美しい緑との対比は、歩く気分をとても豊かにしてくれる。韓国の春の農村を歩く醍醐味ともいえる。

 「子どもの頃」を懐かしむにはかっこうの自然からの贈り物だ。ゴールした後、朝鮮通信使の子孫たちの会合に出席していた前回参加の呂運俊さん(1回目正使の11代目子孫)との再会を懐かしんだ。

 【15日】義興‐永川40キロ、通信使に力を入れている永川市による歓迎パレードは、まず馬3頭が先導。後に昔の衣装を身に着けた韓国ウオーカー3人が少年たちが動かす「輿」の上に座りスタート。テンポのよいサムルノリの後をウオーク隊が続いた。

 今回は市民や大学生、高校生も加わり、若さに満ちたパレードになった。途中、高校生たちはワイワイガヤガヤと話しながら、ノボリ旗を笑顔で掲げて歩いた。永川市の韓日文化交流会のメンバーも背中のTシャツに「ようこそ」と染め抜いて参加した。

氷った水に感激

 この日のウオーカーは合計、202人で韓国コースで最大。河川敷の特別馬場では、伝統の「馬丈才」が行われ、普段見ることの出来ない妙技に歓声が上がった。昔、朝鮮通信使の送別宴が開かれた「朝陽閣」前の歓迎会では、韓国舞踊・テコンドが披露された後、全員が手をつないで輪になって、「アリラン」と「故郷」を合唱し、いにしえの朝鮮通信使に思いをはせた。

 【16日】永川‐慶州37キロ、道の両側に続くサクラ並木はすでに葉桜。長い長い直線道路での歩行は単調で眠くなる。気温が上がる中、待ち受けていた地元ウオーカーからの「氷った水」が差し入れられる。首筋に当てるとヒンヤリして気持ちがいい。

 トイレ休憩のおやつはミニトマトときゅうり。新鮮な野菜の水気がとても美味しく午後3時の気温は32℃に上がる。第1次から10年たち、平均年齢は5歳アップし70歳の「老人ウオーカー」集団だから、地元の人々からの心のこもった差し入れとサポートが何よりの「日韓交流」の証しに思えてくる。慶州が近くなり、新羅時代の大きな円形の古墳が増えてきた。

 【17日】この日は慶州歴史探訪日。

 【18日】慶州‐仇於(慶州市)21キロ、国道7号の歩道を南下、今までは国道だけを歩いたが、前回からは迂回して緑が多い公園の道に変わった。少し遠回りだが新緑の木々の葉の間を歩くのでなんともすがすがしい気分。

少ない古建造物

 今年は気温が上がっても吹いてくる風がヒンヤリしているのでいい気分で歩ける。道はいいのだが、こと「朝鮮通信使の史跡」となると、からっきし少ないのが現状だ。文禄慶長の役もそうだが、韓国戦争でのすさまじい戦いで焼き尽くされた影響がとても大きいようだ。そんな中、昔風の朝鮮風建造物に出会うとうれしくなる。

 このウオークの参加者は、1,ウオークから入って来た人2,朝鮮通信使や昔の朝鮮を知りたいと思って歩いている人、の2通りがある。それぞれの思いが重なり合って融合するのがベスト、と思う。

 歩きながら韓国の「歴史」を見て、また「現状を見て」歩くということで培う「日韓の交流・友情」を体験すれば、相乗効果で「一番いいのだがなあ」と疲れがたまって来た体が教えてくれるようだ。

 【19日】仇於‐蔚山24キロ、蔚山は足利時代の朝鮮通信使・李芸の地元。今日はその李芸の子孫たちが加わった。2年前に偶然出会った子孫の李俊洛さんや大学教授の李明勲さんらが共に歩き、今日と明日の2日間の撮影協力を頼まれた。

 30分後、KBSテレビのカメラマンが取材を開始した。「李芸と朝鮮通信使ウオーク(仮称)」のドキュメンタリーの制作のようだ。「朝鮮通信使」は韓国でもあまり知られていない存在だけに、いい企画だと思う。

 蔚山への地方道は以前は車が少なかったが、今回は大型ダンプが行きかい、とても危険な街道になっていた。丘陵を開発して大規模な産業団地の造成が進められているからだ。2年ぶりに歩くと、そのたくましいほど貪欲な「開発実態」にどこでも出くわした。

1日平均で30キロ

 【20日】蔚山‐熊上(梁山市)。韓国大統領選挙が始まった。交差点を前から歩いてきた運動員が行き交う人々に笑顔で「支持」を訴える。蔚山に再建された「太白楼」で「鶴の舞」や李芸をたたえる詩の朗読を聞いた後、太白川の河川敷を歩いて国道7号を南下する。今日も厳しく長い上り坂が待っている。

 初参加のYさんは、これまで遅れに遅れて日韓のウオーカーに助けられた。ベテランウオーカーのAさんは、午後になると腰が重くなりスローウオークになり集団から遅れる。ほかの人もそれぞれ厳しい。

 1日平均30キロ近い長丁場を何で苦しんで歩くのだろう? みな自問自答して答えを見つけ出そうと自分の「ガンバリ」を信じて歩く。苦しい人に手に手を差し伸べる、といっても人が苦しい時は自分も苦しいよー! と叫びたいくらいだ。こんなウオークの連続なのに、それでも手を差し伸べる人はいるものだ。日韓のいわば「老人同士」の助け合いは簡単ではないが、少しずつだが前へ向かっているようだ。

 【21日】熊上‐釜山25キロ、いよいよ韓国コースの最終日。地元の釜山からのウオーカーが加わり76人でスタート。地元に詳しいウオーカーが先導。

 途中からは建設中で車が通らないバイパス道路を「占有」して歩いた。昨年まで歩いていた古道は大規模な道路建設で無くなり、地方道を歩くことになった。

「近さ」実感 対馬

 峠を越えて釜山市市街地に入ると、まさに「大都会」の道になり、午後4時前に昔の役所「東莱東軒」にゴールした。女性ウオーカーたちはみな抱きあって、ゴールの喜びをかみしめあった。

 東莱区長の挨拶に続いて。宣相圭・韓国隊長、遠藤靖夫・日本隊長に花束が贈られた。

 来賓として、森本康敬釜山総領事は「このウオークはとても日韓交流にとって意義深いことです。日韓の間の悲しい出来事で昨年12月から日本に帰国していましたが、みなさんが日本に行ったら、ぜひ韓国の人は日本を嫌ってはいません、と日本の人々に伝えてください」と挨拶した。

 【22日】休養日。

 【23日】釜山‐対馬へ。港から出て30分で、静かな海の向こうに早くも対馬の島影が見え出した。こんなに近いなんて、と日韓両国の「近さ」を実感する。船旅の韓国人の多くは若者たちで、ほとんどが手ぶら。

 我々の重いスーツケースとの違いは何かな? 聞けばほとんどが対馬での「ショッピング」が目的で、入れ物も「現地調達」という。10年前、韓国旅行者のほとんどが登山か釣りが目的だったのだが。港での歓迎セレモニーの後、通信使ゆかりの宗家の菩提寺などを見学。夕食会は縁地連の松原一征会長などを交え、韓国コースの話に花を咲かせた。

 【24日】対馬‐壱岐。壱岐・芦辺港では横断幕を掲げた島の人たちに拍手で迎えられた。緑が多く起伏にとんだ道を12キロ歩いて壱岐市役所へ。副市長からは島名物の「壱岐焼酎」の7本セットが差し入れられた。バスで通信使が泊まった宿所跡を訪れると偶然、通信使の日本での足跡を研究するため、日光まで行くという韓国人の徐仁範教授らと出会い、「東京ゴールで会いましょう」と話した。

(文・写真 友情ウオークの会 金井三喜雄)

(2017.5.10 民団新聞)
 
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