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龍飛御天歌-朝鮮王朝の世界<23>“天敵逆襲“無念の名君

 前回は、ドラマ「イ・サン」の主人公になっていた22代王・正祖が即位するまでの出来事について書いた。今回は48歳で亡くなるときの話をしたい。

 1800年6月、正祖は高熱で苦しみ、からだ中に腫れ物ができた。それでも、フラフラする状態なのに自ら出向いて薬を調合する現場を視察した。おそらく、毒薬が入っていないかどうか、自分の目で確かめたかったのだろう。

 そればかりか、そばに仕えている医官たちが「腫れ物が出ている患部を見させてください」と言っても許可しなかった。

 むしろ、地方で名声を得ている医者をわざわざ呼んで診察を受けている。侍医たちをまったく信用していないのである。そこには、毒殺を極度に恐れる王の姿があった。10代の頃から対抗勢力に命を狙われてきた正祖らしいと言える。

 危篤に陥ったのは6月28日であった。正祖の病床は沈痛な雰囲気に包まれた。

 ここで、看病と称して現れたのが貞純王后であった。彼女は、正祖の父が米びつに閉じ込められて餓死した際、裏で動いた黒幕の1人だった。しかし、即位後の正祖も貞純王后を処罰することはできなかった。祖父であった21代王・英祖の2番目の正室だったからだ。形のうえで、貞純王后は正祖の祖母にあたる人であった。

 彼女は、正祖がさまざまな政治改革を進めている間、ほぼ謹慎のような生活をしていた。表で目立つことを避けていたのだ。

 しかし、正祖が危篤になると急に病床に姿を見せ、側近たちを叱りつけた。

 「先王(英祖)の症状と似ている。先王は治ったので、そのときの薬を調べて主上(正祖)に処方してさしあげよ」

 それでも、側近たちがグズグズしていると、貞純王后はこう言い放った。

 「私が直接薬をさしあげるから卿(重臣)たちは下がっていなさい」

 王族最長老の女性にこう言われてしまっては、重臣たちも引き下がるしかない。

 結局、病床の正祖のそばには貞純王后だけになった。

 重臣たちが部屋の外で待機していると、突然、貞純王后が慟哭する声が聞こえた。あわてて重臣たちが駆けつけると、正祖は息絶えていた。つまり、正祖を看取ったのは貞純王后1人だった。

 ここから、貞純王后が正祖を毒殺した、という風評が立つようになった。実際、正祖が亡くなって一番利益を受けたのが貞純王后だった。

 王位は正祖の息子の純祖が継いだ。しかし、まだ10歳だったので、貞純王后が摂政となった。それから彼女は何をしたか。

 政敵にカトリック教徒が多いという理由で、信者の大虐殺を行った。さらに、正祖が進めていた改革をことごとくつぶしてしまったのである。

 正祖にとって、貞純王后ほど天敵に該当する存在はいなかった。そんな人物に後を託す形になってしまった。名君のほまれが高い正祖だが、これほど無念なことはなかっただろう。

康煕奉(作家)

(2013.1.30 民団新聞)
 

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