誕生日は3月3日です。未だに、お雛さんの日に生まれたんやねって人から言われます。我が家には、お雛さんとは何の縁もなくて言われてみれば、ああそうやなあと思う程度でした。 お正月も祭祀の記憶はあっても、注連飾り神社の初詣なども、子供の頃から経験が無かったのです。 いつだったか友人の家に行った折りに、お雛様が並んでいるのを見て、我が家にはなかった風景にフムフムと頷きます。お雛さんって、今は在日も飾るんやなあ。 3月に思い出すのはお雛様ではなく、誕生日に母が必ず作ってくれた실떡、미역국です。蒸し餅は祭祀の折にも度々、作っていましたね。餅というより、ケーキのようなふわふわな食感と味わいです。小豆で米粉を挟んだ仄かな甘みと匂いが、今も懐かしくて。 韓国の餅は粳米で出来ていて、栗や棗、胡桃などの堅菓、蓬、南瓜、黒豆を入れた餅に可憐な花煎や、カラフルな虹餅など様々ですね。一度でいいから食べてみたーい! 知っているのは실떡、떡국、떡볶기ぐらいですもん。 韓国ではすでに青銅器時代の遺跡から、餅を蒸す器具シルが出土しています。 って甑、つまり蒸し器なんです。臼に似た形の土器の底辺部に数多の穴を開け、湯気を通して蒸します。現代はそれを基本にして、受け継いでいるんですね。 三国時代からは、果実や他の穀物も使うようになります。新羅時代には面白い逸話があるんですよ。儒理王子と脱解の間で王位争いになるのですが、歯の数が多い人が王になる事になったんですって。 歯は聖なる知恵を表しているのです。決定戦で餅を噛ませたところ、儒理が勝利しました。何本あったのでしょうか? 高麗時代になると、次第に庶民へ拡大してゆきます。端午や秋夕祭祀に餅をお供えするようになったのは、朝鮮王朝の頃からだそう。餅の歴史は人の暮らしの中で、優しく育まれたんです。 保存性を鑑み堅果をふんだんに使って、脂肪、蛋白質、食物繊維など、栄養素を混合させ漢方まで取り入れています。こうして眼にも鮮やかな総合栄養食品が産み出されたんですね。 人々の健康、長寿や子孫の恙なき成長、繁栄、祈りと知恵を込めて。そう、味付けは勿論、私たちのお母さんの慈愛ですよ。お餅の話を書いているせいか、色んな餅が次々に顕れます。 お雛様の菱餅がスーパーにお目見え中ね。買ってみようかしら。けれど誕生日にはヤッパ、慈愛が一杯、手作りのお餅で幸せ気分味わいたいんです。二度とは味わえないけれど。 (2012.2.29 民団新聞) |