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民団は何をめざすのか<下-1>
闘いが変化生んだ…多様化した社会に対応へ

韓国籍への執着

 筆者もその一人であるが、韓国籍に対する執着は尋常でない。当然のように民団が国籍を開放するについても抵抗感がある。韓国人であることの自覚において韓国籍は絶対的と言えるほどの位置を占めていた。この意識を強固にしたのには理由がある。その一つは、日本における差別状況であった。

 日帝時代に、寄る辺なき民として差別され、解放独立後においても深刻な差別に苦しめられてきた。そんな在日韓国人にとっては、苦難の末に達成された大韓民国の樹立であり韓国籍であったし、それは日本社会の差別に抵抗できる拠り所でもあった。

 理由の二つ目は、韓半島の分断である。南北の分断状況は在日同胞社会に深刻な対立構造をもたらした。民団と朝総連の対立である。

 民団創立当初においては比較にならないほど韓国籍者は少数であった。だが、自由民主主義を信奉する民団は、独裁体制で同族を支配し、武力による統一をもくろむ北韓の走狗である朝総連との熾烈な闘争を今日まで展開してきた。

 その結果、今日、韓国籍者は多数を占めるに至ったのである。韓国籍とは在日韓国人、民団にとって闘いの拠り所であり求心力であった。このように位置づけられる韓国国籍は筆者にとっては、自身の人格と同一化している。この認識は筆者一人に限らない。韓国国籍者のほとんどはこの価値観、認識を共有しているはずである。

 しかし、ここで振り返ってみる必要がある。在日韓国人は韓国国籍をもって日本社会の民族差別と闘うことによって差別状況を大きく改善してきた。また朝総連との戦いにおいて組織的に圧倒し、韓国籍者を絶対的多数者に押し上げてきた。

多様化は自らの行動の結果

 その結果、日本社会における国籍の意味は相対化され、朝総連との関係においても韓国籍の意味は相対化された。加えて、日本社会での居住が長期化し世代が進むにつれ国際結婚も日本国籍取得も抵抗は薄れていくのは自然の摂理である。

 つまり自らの行動の結果がこの状況を作り出したのであり、当然の帰結であるとの認識が必要である。社会の変化、歴史の歩みとはこのようにして進んでいくのである。肝要なのはこの先をどうするのかということだ。

 この新たな状況は新たな課題を私たちにもたらしていることを認識する必要がある。日本国籍を取得したからと言って、すべてが解決するわけではない。日本国籍を持つことによって新たな課題、欲求、期待が生まれる。

 例えば、自らのルーツ、アイデンティティーへの欲求や社会的貢献の欲求もそうであるし、孤立感、差別感からの解放などもあるだろう。

 韓国籍者も然りである。韓国籍であるが故の差別、韓国籍維持の不安。新規定住者は日本社会での定住に伴う様々な不安。世代の推移による欲求、期待の変化などである。朝鮮籍から韓国籍に移籍した者は今なお朝鮮籍を維持している孤立感、不満。最近急激に増加している中国籍者(朝鮮族)も日本社会での様々な困難や不安など、それぞれに在日同胞であるが故の解決すべき課題が生まれる。

組織自体の変容が必要

 この多様な在日同胞の欲求、期待に応えていくためには、民団組織自体も多様性と機能性をもつ組織への変容が迫られている。出自、世代、国籍、階層の障壁を取り払い、それぞれの特徴、利点、能力を糾合してこそ可能なことである。

 すでに指摘したようにかつて民団は、在日韓国人を糾合しながらも在日同胞全体のために活動してきた。そのことは綱領にも明記されている。だがその在日同胞が変化し、多様化した。

 一貫して「在日同胞の、在日同胞のための、在日同胞による組織」である民団は、今や在日同胞全体を糾合し、在日同胞の欲求、期待を実践する組織に変容しなければならない。

 そして在日同胞、民団が究極的に目指すところは、民族への貢献、南北の統一であり、韓国への貢献、日本社会への貢献、在日同胞社会への貢献、そして韓日の友好連帯である。

大統合は新たな能力の源泉だ

 たしかに民団は韓国籍に強烈に拘泥せざるを得ない時期があった。しかしそれも過去のことである。今は多様化の時代にあって、出自、世代、国籍、階層を越えて相互に認め合い、尊重しあうことが問われている。そうすることでのみ民団組織は新たな力を獲得することになる。

 韓国語の堪能なものは韓国社会との強力なパイプ役を担い、韓国籍者は韓国の国政に重要な影響力を行使できる。新規定住者は民団組織に活力をもたらすであろうし、朝鮮族も然りである。日本国籍者は言うまでもなく日本社会に影響力を行使できる。朝総連からの移籍者は、訓練された組織能力を民団にもたらすであろう。

 統合された民団は、朝総連との長き戦いに実質的な終止符を打つことになり、この日本において本国に先駆け民族の統合を果たすことになる。新たな力を獲得した民団は、日本社会、韓国社会、韓日関係における様々な問題を解決しうる能力を持つことになるだろう。

 その結果、国籍の障壁をさらに切り崩し、韓国籍保持の条件を拡大していくことにもなる。

(林三鎬)

(2018.1.31 民団新聞)
 
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