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<寄稿>新しい在留管理制度施行…在日児童・生徒にも影響

小西和治 全国在日外国人教育研究所 事務局長

 9日から施行された新しい在留管理制度は在日同胞児童・生徒にも大きな影響を与える。また、重大な問題点も内包していることが明らかになった。これらから子どもたちを守るため、特に大切だと思える4点について、全国在日外国人教育研究所の小西和治さんが寄稿した。

教育関係者と保護者へ注意喚起
「卒業証書、指導要録に本名記載を」

 16歳以上の者がこれから携帯することになる「特別永住者証明書」「在留カード」には通称名の記載が無い。従来から各地の教育委員会は、学校が作成する公文書は全て本名(民族名)という基本方針を持っていた。今後この方針をさらに徹底させないと、パスポートや特別永住者証明書等と学校発行文書の間に矛盾が生じ、せっかくの卒業資格の活用が困難になることも起こりえる。

 かつて、卒業証明書の名前とパスポートの名前の相違により、海外留学のチャンスを逃した者が存在した。また、学校発行の公文書である卒業証書に通称名しか記載されておらず、外国人登録証明書の名前と一致しないため、本人との同一人性の証明ができず、薬剤師や医師等の国家試験の受験が1年遅れたという悲劇も発生した。

 このままでは、このような「事件」の頻発が想定される。卒業証書をはじめとする学校発行の公文書に本名が正しく記載されなければ、子どもたちが、卒業時点では想定していなかった被害を将来、受ける「事件」の増加が心配される。

 総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度への移行等に関する実務研究会」の配布資料に、通称名のみの住民票は発行されないことが明記されている。学校が発行する公文書も、このようにする事を各地で求めていく必要があろう。

 学校の児童・生徒や卒業生にとって、基本的な公文書は指導要録である。万一、これに通称名しか書かれていないと、学校は日本人であると誤解し、とんでもない結果が発生する。

 高校を例にとると、一部の学校で実施されている外国人生徒向けの新在留管理制度の説明が受けられない。また、海外修学旅行のための旅券取得が間に合わない、財団法人朝鮮奨学会の奨学金の書類が配布されない、外国人向けの学校生活や進路についての教育の対象にされず、高校や都道府県単位で活動が散見できる同胞高校生の集いの案内からも排除され、一生の損失となる事もある。 その悲劇の最大のものが、前述した通称名のみが記載された卒業証書の発行であろう。

 新在留管理制度施行前は、外国人登録原票のデータを、学校が教育資料として活用する事が困難であった。ところが、住民基本台帳に外国人も掲載され、学校は校長を通じて、自治体から外国人児童・生徒の本名、在留資格、保護者の法的地位などの情報を入手することが容易になった。この情報を、指導要録の本名(民族名)記載をはじめとする、外国人児童・生徒が外国人として堂々と生きていくための教育に活用する事ができるようになったのである。

 外国人と日本人で構成されている家庭も、今度、初めて同じ住民票に記載されることになった。その結果、ダブルの子どもや、家族のうち誰かが外国籍である子どもの把握が可能になり、このデータを市民課↓教育委員会↓校長のルートで学校に届くシステムを構築しようとしている自治体もある。外国にルーツを持つ子どもを尊重し、在日外国人教育を充実させる取り組みである。

 入管法改定により、手続きミスや遅延に対する罰則が強化された。新制度を教員は正しく学習して、保護者のうっかりミスや16歳の初切替えに対する無知によって、子どもが不利益を被ることがないように配慮する必要がある。切替え時には、従来のような自治体からの事前通知はなくなる見込みである。出頭の時期も、場所も、旧制度とは異なる。高校生はもちろんのこと、中学生への事前指導も必要である。

 全外教研究所では、「研究紀要・在日外国人教育」第四号(本年8月発行)に「新在留管理制度が学校現場に与える影響」と題して、教員・保護者として知らねばならない基礎知識を詳しく説明した文章を掲載することを決定している。

(2012.7.11 民団新聞)
 

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