韓国における現代の日本語教育は、1965年の日韓国交正常化を機に始まったといわれているが、09年の国際交流基金の調査結果をみると、世界の日本語学習者数は365万人。 そのうち韓国での学習者数は約96万人(26・4%)で、世界で一番多い。第2位は中国の約83万人(22・7%)、3位はインドネシアの約72万人(19・6%)である。 この3カ国で世界の日本語学習者の3分の2を占めている。学習動機をみると、アニメや歌、ドラマなどの日本文化に興味があることや、日本語と韓国語に類似点が多いことなどがあげられている。 確かに日本語と韓国語は、語順が似ていたり、漢語や助詞を使うなどの類似点が多い。しかし、似ているために母語に引かれて、かえって間違えてしまうこともある。 たとえば、日本語と韓国語の慣用表現の場合もそうだ。韓国語の慣用表現をみると、日本語と似ているものも多いが、異なるものも少なくない。例をあげると、日本語の「口が軽い」「目が高い」は、韓国語では「 (口が軽い)」「 (目が高い)」といい、日本語と同じ。しかし、日本語の「顔が広い」は、韓国語では「 (足が広い)」である。 意味は、「世間に知り合いが多い。交際範囲が広い。知人が多い」で同じだが、日本語では「顔」、韓国語では「足」という単語を使う。韓国語では、「足の届く所(交流範囲)が広い」ということだろうか。学生の日本語作文にも、「僕の叔父さんは足が広いので、就職の世話をしてくれると思います」のような間違いがみられる。 また、韓国ならではの慣用表現もある。たとえば、「 (ゴム靴を逆に履く)」。軍隊生活を終えたK君が復学し、久しぶりに会った。彼と仲のよかった女子学生のことを思い出し、「Aさん、元気、今どうしてるの」と尋ねると、「彼女は僕が軍隊に行っている間に、ゴム靴を逆さに履きました。それで、連絡をとっていません」と答えた。 慣用句の意味がわからなかった私は、「ゴム靴を逆さに履くとなぜ連絡しないの」と答えにくそうにしているK君に、何度も聞き返したのだが、それが「女子学生が心変わりをした」という意味であることを知って、深く反省した。 このように、日本語と韓国語の慣用表現には、同じもの、少し違うもの、全く違うものがある。似ていて非なるものがこんなところにもあるのである。 齊藤 明美 (2011.1.26 民団新聞) |