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<民論団論>再び問う川崎の採用「規定」
川崎市職員 金元大祐

国籍での職務制限は権限濫用
10年も続く不作為

当事者の告発

 政令指定都市としては初めて外国籍住民に一般職の受験門戸を開いたことで評価された川崎市。一方、市独自の職務判断基準を適用し、「公権力の行使に係わる」消防職など182の職務には就かせないという「運用規定」を設けていたことが明らかとなり、門戸開放への評価は「差別の固定化につながる」という批判に変わっていった。市は最近、この182の制限職務をさらに192に増やした。この過剰とも思える市の対応を批判する投書が内部の当事者から届けられた。

◇  ◇  ◇

 川崎市は96年度実施の職員採用試験から、消防士を除くすべての職種における国籍条項を撤廃し翌97年4月、その具体的な内容を要綱で定めた。いわゆる「運用規定」なるものだ。

 これにより、外国籍の職員は、全職務の約20%を占める「公権力の行使」「公の意思形成への参画」に係る職務への配属が制限されることになった。職員の身分などに関しては、地方公務員法または条例、もしくはその個別委任を受けた規則、要綱によるべきであるにもかかわらず、「内閣法制局見解」(いわゆる当然の法理)をより所として白紙委任的に要綱が制定されたことに対して、あらためて問題を提起したい。

 市人事課は、今回の見直しのポイントとして市組織改編、法令改正・廃止等の変更を理由に挙げているが、運用規定がこの10年間放置されてきたこと自体が異常極まりない。

 今回の見直しは、足かせをはめられた対象職員に対してさらに目隠しをするようなものだ。あらためてこれまでの不作為についても問いただしたい。

制限職務数10もふえた

 今回の見直しにより、制限職務数が182から192となった。この間の機関委任事務の廃止といった地方分権の流れを汲んでおらず、その実は単なる制限強化である。市人事課は「市民から望まれる職員」をどう考えているのだろうか。

 職務遂行能力や、市民から信頼されるに足る誠実性が必要であるとするならば、それを持っていない者にこそ職務制限を設けるべきではなかろうか。

 それをせず、単に国籍だけを理由として制限を加えることには、合理性は見い出せない。区別ではなく、明らかな差別、労働基準法、国際人権規約違反である。

 また、見直しにあたって、対象職員に対する事前説明は一切なかった。対象職務が増加するということは、対象職員の人事異動の機会を制限することと同義である。内部規則に当たる要綱に基づく行為であっても、それが職員の身分等を制限する場合には、その行為は行政行為に該当し、不利益変更に際しては、処分の相手方の意見を聴かなければならない。

 その手続を踏んでいない行為は当然、無効となる。

 たとえ、人事事項に関しては任用権者に一定の裁量権が認められるとしても、その濫用の疑いは免れない。

いきいきは誰がするか

 一方、対象職員には内容を伏せておきながら、運用規程撤廃を叫ぶ市民団体に対しては、決裁前に交渉を実施し、施行後は直ちに文書を送付しているのだ。本末転倒もはなはだしい。運用規程のサブタイトルにうたわれた「外国籍職員のためのいきいき人事」とは、市民団体にいい顔をし、市人事課がいきいきするという意味なのだろうか。

 さらには、事前説明を怠った市人事課は、事後における対象職員からの問い合わせに対しても受身の姿勢を固持し、自らの説明義務を過小化しながら2週間以上も放置した。

 市人事課によれば、今回の見直しは制度ではないため、重要性が低く、また、来年度の人事異動の説明に間に合えばよしという、当事者意識の欠落した一方的な考えによるものである。

不祥事多発の遠因にも

 最近、公務員による不祥事が多く市民からの信頼を失墜させているが、川崎市ではそれが特に目立つようだ。そのような現象と考え合わせると、上記のような市人事課による市職員への思いやりのない対応が、職員の堕落を生む遠因になっているような気がしてならない。

■□
筆者注

 川崎市独自の判断基準で「命令・処分などを通じて対象となる市民の意思にかかわらず権利・自由を制限することとなる職務」を規定し直した。その数は23にのぼる。

 中には「路上喫煙者」や「飲料容器散乱防止」への「注意・指導、その指示に従わない場合の過料徴収の実施」、「保護者の児童虐待等への立ち入り検査」や「自動車リサイクル法関連業者への登録許可」など、首をひねるようなものもある。

 一方、基本的に関連する法令がなくなったり、法令が統合されたことによって、職務として明示されなくなったものも13ある。差し引き10だが、実質的な削除ではない。

(2007.11.28 民団新聞)
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