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サラム賛歌<6>歴史と言葉にこだわる
独立運動家の墓所を捜して(2014年9月)
詩人 李潤玉さん

 「日本で韓流スターが活躍するのを見て、『国威宣揚』だと喜ぶ韓国人がいるけれど、それはもともと、日本の軍国主義の言葉です」

 太極旗に向かって、右手を左胸に当てて敬礼する「国民儀礼」も、実は戦時中の宮城遥拝と君が代斉唱の儀式を指した言葉だ。

 韓国語の中に、今も数多く残る日本語の「チッコギ(滓)」。李潤玉さん(57)は『サクラ訓民正音』『汚染された国語辞典』などの著作で、その問題を鋭く指摘している。

 戦後70年が過ぎてもなお、日本語を直訳した表現を使い続けるのはなぜか。単語の出所を検証し、別の表現に置き換える作業を、なぜ韓国の国語学者たちは怠ったのか。韓国語大辞典の中には、由来が日本語であることすら記載されていない場合が多いという。言葉に人一倍こだわる李さんには、それが許せない。

 昨年には『創氏改名されたわが草花』を出刊した。野に咲く花の名にも、日本語の残滓が色濃く残ることを指摘して、話題を呼んだ。

 李さんは日本語を専攻し、韓国の大学で日本語を教えている。早稲田大学の客員研究員として、日本に滞在したこともある。日本に知り合いも多く、日本と韓国の民間交流のために東奔西走する人だ。

 李さんがとくにこだわっているのは、歴史だ。日本の中の韓国文化や、百済や高句麗、新羅の高僧が日本の仏教文化に及ぼした影響について研究した著作もある。歴史の問題を明らかにしなければ、本当の交流はできないというのが、李さんの主張なのだ。

 李さんはまた詩人として、親日文学人を風刺した『サクラに群がる蛾』、抗日女性独立運動家を謳った『西間島に野の花が咲く』という詩集も出した。

 「韓国の大学生に抗日運動家の名前を書かせてみたら、男は何人も挙がるけれど、女性は柳寛順一人しか出ないことがショックでした。なぜこれまで、女性独立運動家に照明が当たらなかったのか。だれも知らせてくれないのなら、私がやろうと思ったのです」

 現在、韓国の国家報勲処が認めた女性抗日独立運動家は200人余り。『西間島に野の花が咲く』の詩集では、1巻につき20人ずつを紹介する形で、昨年までに5巻が刊行された。

 一人ひとりの足跡を調べ、ゆかりの地を踏査して回る。その体験を元に、活動や生き様を詩として詠む。そんな孤独な作業を、李さんはもう何年もこつこつと続けている。

 民族啓蒙運動を行った教育者、独立万歳を叫んだ妓生、道庁に爆弾を投げた妊婦、軍資金を隠し持って満洲に渡った嫁、夫と共に独立軍に加わった妻など、歴史の教科書に載っていない数多くの女性たちがいた。 「獄中の息子よ/刀でも銃でも堂々と受けよ/男として世に生まれ/祖国のために戦い死ぬこと/それに勝る栄誉はない」

 この母がいたからこそ、あの息子があった。死刑台に上る息子に「堂々と死ね」と書き送った安重根の母・趙マリアは、死後80年もたってから、韓国政府から追叙された。男優先の社会はこれまで、女性独立運動家について関心がなさすぎた。

 李さんは第6巻の詩集を出すために、今も前進を続けている。

戸田郁子(作家)

(2016.5.11 民団新聞)
 
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