掲載日 : [22-03-30] 照会数 : 7423
2021年度総括報告…第76回中央委員会
Ⅰ.コロナ対策と民団活動の両立
2021年は前年に続き、私たちが《コロナの時代》を生きていることを印象づけた1年でありました。年初から2回目の緊急事態宣言が発令され、その後蔓延防止等特別措置が取られましたが、感染は収まらず、4月に3回目の緊急事態宣言、さらに7月に4回目の緊急事態宣言が出されました。しかし、デルタ株が猛威を振るい、8月中旬には感染者が1日2万人を超えるほどに拡大しました。
2回にわたるワクチン接種が拡がり、感染者数の減少によりやっと10月1日に緊急事態宣言が解除されましたが、12月からオミクロン変異株が拡がりを見せ、コロナ禍の収束の見通しが立たない状況が続いています。
この間私たちは、コロナウイルス感染の拡大と日本政府の感染対策に翻弄されてきました。休業要請や各種の自粛要請が続き、韓日間の往来も制限されました。私たちの生活様式も変更を余儀なくされ、各種事業や雇用等にも大きな影響が出ました。飲食店が4万5000軒(全体の1割)消滅したといわれています。
このような中、本団もまた、集まる自由、対面する自由が制限され、諸事業の見直しを迫られました。厳しい環境のもとで、それでも「中止だけは避けたい」「延期しても中止にはしない」思いで、規模を縮小し感染対策を講じながらも諸事業を推進してきました。民団75年の歴史の歩みが思うように進まない中、相互扶助の精神で団結し、困難を乗り越えて来られた全国の各級組織に心より敬意を表する次第です。
Ⅱ.第75回定期中央委員会と第55回定期中央大会
コロナ禍による緊急事態宣言の発令下にあることから、中央執行委員会の2度の決議により、第75回定期中央委員会は「書面決議」により、第55回定期中央大会は「郵便投票」により、2月26日に開催されオンライン中継で配信されました。中央委員・代議員を招集せず特例措置で行なわれたのは民団史上、初めてのことであります。
第75回定期中央委員会は、中央委員在籍198人中、郵送で届いた書面決議書165人の参与で成立宣言し、2020年度の活動を総括するとともに、新年度活動方針案、予算案が原案通り承認されました。
第75回定期中央委員会終了後、第55回定期中央大会が開催され、中央委員・代議員在籍517人中、郵便投票による491人が参与したことで成立しました。第54期中央三機関役員の総辞職後、役員改選に入り、選挙管理委員会が開票を3月12日に延期することを議決機関に申し出たことで、休会となりました。
▽大会の続会
大会は3月12日に続会されました。中央三機関役員は総辞職しましたが、規約に従い、大会完了時までその任務を引き続き行使しました。新型コロナウイルス感染拡大の関係で、会場は中央三機関役員、選挙管理委員、三機関長立候補者、運営要員(中央常任委員および職員)に入場を制限して再開されました。中央委員・代議員と選挙人には限定公開の形でYouTubeを通してライブ配信しました。選挙管理委員会は、一方の団長候補者の選挙運動に明白な違反行為があるとして、選挙管理規定第7条6項により立候補登録の取消しを報告しました。その後、副議長による議事進行が混乱し、再び休会となりました。
▽大会再続会で新三機関長選出
2度にわたって休会した大会は4月6日に再続会され、選挙管理委員会は改めて一方の団長立候補者の立候補登録の取消しを報告しました。この報告を受け、議長は、三機関長候補者がともに単一候補であることから、選挙管理規定第13条3項及び4項により、団長に呂健二候補、議長に朴安淳候補、監察委員長に金春植候補が選出されたことを宣言し、大会は終了しました。
▽臨時中央大会求める署名の確認書、過半数満たさず
所謂「民団中央正常化委員会」が提出した、臨時中央大会の開催を求める署名に対する「本人自筆署名確認書」の確認が7月19日に行われました。暫定有効署名者284人に対し、返送された確認書が241通。これにより、中央委員・代議員522人の過半数である262人に満たず、臨時中央大会の開催請求は不成立となりました。中央議決機関では、署名は無効とし、今期は本件の趣旨に関連した署名については、再度取り扱わないことを明らかにしました。
Ⅲ.3重点課業
1.同胞の生活と権益守護
▽民団コロナワクチン職域接種
日本政府の了承を得て、本団はコロナワクチン職域接種を実施しました。ワクチン不足で職域接種が遅れましたが、同胞や地域住民がコロナに打ち勝ち、安全・安心な生活を送れるよう寄与するため、9月・10月に韓国中央会館で行いました。対象は在日同胞だけでなく、国籍を問わず満16歳以上であれば誰でも接種できるとあって、都内をはじめ、神奈川や埼玉などからも接種にかけつけました。接種券が届かない人や住所移転などで予約が困難だった接種難民や、言葉の壁で接種予約の方法が困難だった外国人住民も目立ち、特に神奈川県に住むネパール人コミュニティからは80人以上が接種に訪れました。
民団は、早くから「多文化共生社会の実現」や「日本地域社会への貢献」を掲げ、阪神・淡路大震災や東日本大震災に際しての避難所での炊き出し、救援物資配布などの救援活動を展開してきました。今回もワクチン接種を通じて、国境を越えた助け合いの精神を遺憾なく発揮し、「在日外国人団体のレジェンドでもある民団のこのような支援活動にとても感謝している」「民団がやってくれて助かった」との声が多く寄せられました。
▽みんだん生活相談センター
コロナ感染対策により、9月まで直接面談ができず電話相談に切り替えましたが、相続や家族関係、在留資格問題など、相談件数は多く、前年より200件余り多い784件でした。緊急事態宣言解除後の11月には都内で全体会議を開き、専門相談員や各地方センターの実務者等が参加し、当面の課題等について意見交換しました。現在、全国に18の相談センターが活動しています。各種勉強会や本国セミナーは中止されましたが、大阪、埼玉、広島では研修会、意見交換会が開かれました。コロナの影響で地方センターの新規開設ができませんでしたが、継続して民団が団員同胞のための生活相談センターとしての役割を果たしていくよう尽力してまいります。
▽ヘイトスピーチ・ヘイトクライム根絶
「対策法」施行から5年
日本初の反人種差別法「ヘイトスピーチ対策法」の施行から5年が過ぎました。ヘイトデモの回数は20年9回(うち6回が東京)と多い時期(13年)の10分の1未満に減少し、街頭デモはほとんどできなくなりました。また、社会問題化しているネット上の誹謗中傷については裁判で差別認定され損害賠償も確定する傾向にあります。
連動して地方でも対策法の実効化が進んでいます。19年12月に成立した川崎市「差別のない人権尊重のまちづくり条例」には、日本で初めての刑事罰つきのヘイトスピーチ禁止条項があります。大阪市は16年7月から全面施行された「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」に基づき19年12月、全国で初めてヘイト発言者の氏名を公表しました。東京都は「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」(19年4月施行)に基づき、関東大震災における朝鮮人虐殺者の慰霊祭に対する妨害をヘイトスピーチとして認定しました。一方で、理念法のため禁止規定、制裁規定がなく、ヘイトを止めるための実効性が弱いことが課題となっています。実効性ある禁止法が必要であり、裁判しなくても人権救済される制度づくりが求められています。
▽ネットヘイトに賠償命令
5月、東京高裁はブログ上で神奈川県に住む在日韓国人4世の大学生に差別的な書き込みを行った男性に対し、計130万円の損害賠償を命じました。高裁は一審判決を支持し、「名誉感情だけでなく、個人の尊厳や人格権を侵害し、人間としての地位を否定する悪質な投稿であった」ことを認め、賠償額を増額しました。1回の書き込みで100万円の慰謝料を請求されたことは初めてであり、人種差別そのものを違法と認めた極めて画期的な判決であり、今後ヘイトスピーチに対する抑止効果が期待できるものであります。
▽NHK広島「朝鮮人」ツイート…広島弁護士会「極めて不適切」
NHK広島放送局が原爆被害を伝えるため、当時の日記をもとにその年の暮らしぶりを発信していたツイッターの表現について、広島弁護士会は8月、「差別を助長する意図で投稿を発信したとまではいえない」とした一方、「放送事業者の対応として極めて不適切で、発信方法などに十分配慮するよう求める」とした要望書を広島放送局に提出しました。これは民団中央人権擁護委員会、民団広島本部、在日韓国人法曹フォーラムの3団体連名で広島法務局と広島弁護士会に人権救済の申し立てを行っていたものであります。本団は、広島韓国会館で記者会見し、NHKには差別を産み出さない取り組みをするよう重ねて求めました。NHKは「要望を真摯に受け止め、引き続き再発防止のための対策を徹底していく」とのコメントを発表したものの、在日コリアンには謝罪していません。
▽DHC会長のヘイトコラムに対する声明文
6月、民団中央人権擁護委員会は、株式会社DHC会長が自社公式ホームページ上に、在日コリアンに対する民族差別を煽るコラムを掲載した問題に対し、大きな憤りと強い遺憾の意を表明する声明文を出しました。
在日コリアンを差別するコラムは、この間3度にわたって追加され、多くのメディアや市民運動団体から「差別企業」であるとの批判や抗議が集まる中においても、コラム削除に至るまで約半年間放置され続け、私たちに非常な不快感・被害感情を与えたものであります。
自治体においても、DHCと災害時のサプリメント供給などで包括連携協定を結ぶ21市のうち、3市が「人種差別にあたる」として協定の凍結や解除をしています。DHCの取引企業においても「企業の人権方針などに沿わない」との見解が出、公式謝罪と再発防止策の実行を求めています。
▽第3回人権セミナー
民団中央人権擁護委員会と法曹フォーラム主催で12月に開催しました。1923年9月1日の関東大震災で犠牲となった同胞らを追悼し「『忘れない!』回り道でも前進を」をテーマに、組織的かつ広範囲な流言にかかわった国家の責任を検証しました。私たちは、歴史修正主義への批判を忘れず、事実を認定し共有することが大事であることを確認し、また人権と生活権問題を中心とした民団のこれまでの取り組みと今後の課題も指摘されました。
2.次世代育成
▽コロナ禍、オリニジャンボリー見送り
新型コロナウイルス感染拡大の第4波が猛威を振るい、3度目の非常事態宣言発出によって、次世代育成事業の一大イベント「オリニジャンボリー」は昨年に続いて中止となりました。これまでオリニジャンボリーを契機に民族名使用を決意したり、民族学校への進学や母国修学したケースも多く、仲間としての全国的な連帯と韓国人としての意識を育み、次世代の育成に大きな役割を果たしてきただけに残念であります。中央本部では代替事業として小規模ながらオンラインで「青少年事業促進セミナー」や次世代を対象に「ZooMでつながれ!仲間たち」を開催しました。コロナ禍の中にも拘らず、全国各地で規模を縮小し、工夫を凝らしながら、オリニ交流会や各種キャンプ、林間学校等を実施した各級組織に敬意を表します。
▽青年会コリアン・ユース・アカデミー
青年会を担っていく多様な人材の育成を目的とした「コリアン・ユース・アカデミー」(KYA)が6月に韓国中央会館で(第32回)、11月には第33回が名古屋市内で開催されました。
名古屋では緊急事態宣言の全面解除により2年ぶりに全国の仲間が一堂に集い対面方式での開催となりました。「全国の仲間とつながりスキルアップしよう」をテーマにコミュニケーション能力、ヒアリング力、質問能力の向上をめざして活発な討論をしました。青年会では地方の人材不足が増しており、青年会の育成に本団は一層注力しなければなりません。
▽京都国際高校新たな歴史…甲子園ベスト4
阪神甲子園球場で開催された第103回全国高校野球選手権大会に京都国際高校は春に続いて出場し、夏の甲子園初出場で4強入りという好成績を挙げました。同校の前身は民族学校「京都韓国学園」であります。韓国語の校歌がテレビを通じて日本全国に流れ、在日同胞や関係者は歴史的な感慨を覚え、共に喜び合いました。新しい世代による韓日友好の場面でもありました。
3.韓日友好
長い間、私たちは地域社会に寄与する一員として韓日友好関係増進のために努力してきました。この数年、歴史認識問題に起因する韓日関係の悪化により、私たちは厳しい試練にさらされています。在日同胞社会の安定と発展は、韓日両国間の友好親善なしには成り立ちません。
新型コロナウイルスの大流行で1年延期になり、7月に無観客で開催された東京オリンピック・パラリンピック大会は、主にテレビ観戦で韓日両国選手を応援することになり、本団がこれまで培ってきた韓日友好促進の場として活かすことができなかったのは残念でした。
▽日韓交流おまつり、10月マダン各地で
韓日国交正常化40周年を記念して2005年にスタートし、13回目になる「韓日祝祭ハンマダン」は9月、新型コロナウイルスの関係で昨年に続いてオンラインで開催されました。オンラインとなったものの、9万人以上の視聴数を記録し、「交流は継続してこそ意義がある」をモットーに市民レベルの草の根交流を通じて友情を深めました。
また団員の親睦・交流と韓日文化親善を目的とする民団主催の秋の風物詩「10月のマダン」が各地で規模を縮小し開催されました。新型コロナの感染拡大に伴い対面行事を控えてきましたが、会場では久しぶりの再会に涙ぐむ場面も見られました。
▽日韓協中央会45周年
日韓親善協会中央会は12月、東京都内のホテルで創立45周年を記念して特別講演会と懇親会を開催しました。韓日関係の改善を願う一方で、「政治は冷え込んでいるが、民間レベル、特に若者どうしの理解と交流は止めどなく活発化している」「トップ同士のリーダーシップと決断力」が必要との声が多く聞かれました。45周年を期して、今後も日韓親善協会は民団と共に民間次元で両国の友好親善を発展させていくことを確認しあう場となりました。
Ⅳ.組織基盤強化と同胞社会の和合
全国地方三機関長・中央傘下団体長会議開催
協働して危機を克服しよう!
6月、大阪韓国人会館で21年度全国地方三機関長・中央傘下団体長会議を開催しました。新型コロナウイルスの影響で、2年ぶりの開催となるもので、コロナ感染防止と民団活動の両立、組織の結束と信頼回復を緊要課題としました。また同胞の生活を守っていく民団の必要性と、次世代育成へ向けて全国の民団が団結して前進し、各地域における活動を強化していく事が確認されました。団務報告と示達に対する質疑応答の後、第55回定期中央大会をめぐる混乱状況に対する率直な意見交換が行われました。
▽ネットワークをつくろう!同胞家庭訪問
緊急事態宣言解除後、香川(10月)と奈良(11月)で集中家庭訪問を実施しました。昨年から続くコロナ禍の影響で行事が中止または延期となり、団員との接点が薄れようとしている中、中央本部と一体となって県内同胞宅を訪問しました。団員同胞の安否確認とともに慰労と激励に努め、各家庭にはマスク、民団オリジナルのエコバッグ、お米、韓国食品などを配布しました。また災害時の非常連絡網の構築や2022年2月実施の第20代大統領選挙の在外投票の案内などを展開しました。
団員との接点を拡大するため、団員情報の更新、分家した子弟の居住地把握、災害時の緊急連絡先となる携帯番号の把握、民団への要望や意見などを聴き取りました。高齢家庭や一人暮らしの団員同胞が増え、民団と疎遠になった同胞も少なくなく、同胞のケアの必要性が痛感されました。ほとんどの人が連絡網の作成に積極的に協力してくれ、次世代との出会いもあり、団員同胞との対面の重要性を改めて確認しました。
▽中央組織学院も2年ぶり
コロナウイルス感染拡大の関係で、在日同胞リーダー育成スクール(中央組織学院)が2年ぶりに実施されました。本来は1泊2日の日程のところ、コロナ感染防止対策として1日限りの特別措置がとられました。石川教室(9月24日)、大阪教室(10月31日)、中央教室(11月7日)、奈良教室(11月14日)、神奈川教室(12月4日)がそれぞれ実施され、民団の歴史、当面課題と主要事業、分任討議を通じて認識を深めました。
▽婦人会全国大研修会
恒例の婦人会全国大研修会が6月、全国7ブロックで開催されました。コロナ禍の中、規模を縮小したにも拘わらず600名近くが参加し、婦人会の役割や活動すべき内容を確認しあいました。また11月下旬には、秋季地区研修会を東西に分けて(東日本は福島、西日本は広島)開催し、親睦を深めました。
▽創団75周年記念式典「絆を未来へ」ネット配信
民団は創団75周年を迎えました。コロナ禍のなか、若い人たちが準備し「絆を未来へ」をテーマに掲げて、記念式典及び記念映像をYouTubeで上映しました。在日の歴史、民団の歴史を伝えるとともに、地方本部・支部の活動、次世代からのメッセージを紹介しました。
民団は自由民主主義を守り、民族団体、生活者団体としてこれからも多様なニーズに応じて発展していくことを確認しました。この75年間、母国の発展と韓日友好への寄与、在日の差別解消と権益確保のため、民団が果してきた功績は大きいものがあります。自信をもって民団が歩んだ歴史を語り伝えることが大事であります。
▽長崎韓国人原爆犠牲者慰霊碑建立…長崎県本部の努力実る
長崎への原爆投下で犠牲になった韓国人を追悼する慰霊碑が長崎市の平和公園に建立され、11月に除幕式と慰霊祭が執り行われました。原爆同胞犠牲者を慰霊する碑は70年に広島に建立されたが、長崎には建てられませんでした。長崎にも「慰霊碑」をと94年に民団長崎県本部が建立に努力しましたが、方式や敷地確保問題が重なり進展がみられず、11年に韓国原爆被害者協会と駐福岡韓国総領事館が長崎市に平和公園内の建設場所の提供を要請し、13年には民団長崎県本部を中心に建設委員会が構成され、実に27年を経てようやく実現しました。
在日韓国人同胞の手で念願だった慰霊碑が建立できたことは、韓国政府の支援及び在日同胞や日韓の関係者の努力のおかげであります。この碑が同胞の被爆の歴史を次世代に伝え、二度と戦争の悲劇を繰り返さないための記憶の礎となることが願われます。