掲載日 : [21-06-14] 照会数 : 10428
歴史学者の姜徳相さん死去…在日韓人歴史資料館初代館長
[ 在日韓人歴史資料館のオープンセレモニーであいさつをする姜徳相さん(2005年11月23日) ]
在日韓人歴史資料館の初代館長を務めた関東大震災時の官憲による朝鮮人虐殺の真相を究明した在日韓国人の民族主義歴史学者、姜徳相さん(滋賀県立大学名誉教授)が12日、悪性リンパ腫で死去した。89歳だった。
姜さんは60年代から収集した日本の機密文書、官僚の手記、官憲および民間人の証言をもとに、関東大震災における朝鮮人虐殺は「国家権力を主犯に民衆を従犯にした民族的大犯罪」と主張した。
姜さんは64年、資料集『関東大震災と朝鮮人』のほか関連論文を30編以上発表した。これらの研究が90年代に日本の教科書に関東大震災時の朝鮮人虐殺の内容が含まれる契機になったと評価されている。
姜さんはまた、著書に『関東大震災』(中央公論社)、『朝鮮独立運動の群像』(青木書店)、『朝鮮人学徒出陣-もう一つのわだつみのこえ』(岩波書店)、『朝鮮三・一独立運動』(呂運亨評伝1、新幹社)、『上海臨時政府』(呂運亨評伝2、新潮社)、『錦絵の中の朝鮮と中国』(岩波書店)など。編著に『現代史資料』(朝鮮1~6、みすず書房)などがある。
姜さんは1932年に慶尚南道咸陽で生まれ、2年後に来日。早稲田大学史学科学士・修士学位を取得し、明治大学で東洋史博士課程を修了した。89年に一橋大学社会学部教授に就任した時、「在日韓国人初の国立大教授」として話題を集めた。
2005年に民団が設立した在日韓人歴史資料館の初代館長を務めた。館長当時、「若い世代にとって資料館に展示しているものすべてが祖父母時代の歴史証明であり、一つ一つがじぶんの、ルーツを知る歴史書であります。資料館は祖父母の時代を思い涙をする感性を磨く場であります。展示を30分見るだけで祖父母の自叙伝を、在日の歴史書を一冊読んだと言えます」と述べていた。