
在日同胞1世の小説家、金達寿さんの代表作「玄海灘」をモチーフとした演劇が30日から京王線調布駅近くの調布市せんがわ劇場で上演される。季刊「三千里」創刊当初から金さんと親交の深かった在日2世エッセイスト、呉文子さん(東京都調布市)が市民有志と一緒になって「玄海灘を上演する会」を立ち上げて準備。在外同胞庁からも助成金を受けた。
呉さんは2021年、神奈川近代文学館で開催された「金達寿生誕100周年記念展」に研究者の廣瀬陽一さんとともに登壇し、亡き金達寿さんの思い出を語ったことがある。この年は呉さんが主宰し地域に根差して韓・日交流に地道に取り組んできた市民グループ「異文化を愉しむ会」の20周年にあたることから節目の記念企画として舞台化を思い立ったという。
主人公、「西敬泰」は地元の地方紙を退職して日本統治下の韓半島にわたり、朝鮮総督府の機関紙としての役割を果たしていた「京城日報」に就職。校閲部を経て社会部に移り、大記者を夢見て取材活動に奔走する。だが、日本の大陸侵略を目の当たりにしてデマカセの戦争扇動記事を書く仕事に虚しさを覚えていく。作品では植民地支配と抗日闘争の歴史も奥行きをもって描いた。
呉さんは「この小説を舞台化することで、近代日韓関係の暗い歴史から目をそらさず、作者がこの作品に込めた平和と共生のメッセージを継承し、日本と在日の民族を超えた人間的な関係を築くその一助になれば」と企画の意図を語った。
上演企画は20年前に一人芝居で詩人尹東柱を演じたこともある元ピープルシアター所属の俳優、二宮聡さんと出会ったことからとんとん拍子に進んだ。
二宮さんは「小説を読んでみて、くず屋から身を起こした金達寿のバイタリティーに引き込まれた。人間的にも人をひきつける魅力がある。この作品ならば私も積極的に関わりたいものだとすぐに思った」という。舞台では主人公「西敬泰」にからむ主要人物の一人を演じている。
一方、演出担当の志賀澤子さん(東京演劇アンサンブル代表)は「原作が濃密。その中から特に感動したところを演劇に反映させた」と狙いを語った。
9月3日まで14時と19時からの昼・夜2回公演(開場は開演30分前。ただし、8月30日は19時から、9月3日は14時からの1回公演のみ)。
日時指定自由席一般4000円。申し込みは042・486・8129(異文化を愉しむ会)または090・4623・9283(呉文子)
(2023.8.15民団新聞)