蔵書数1万5千冊に
【大阪】在日韓国商工会議所連合会副会長で民団南大阪支部常任顧問の文晟仁さん(72)が自宅前のガレージを改装、私設図書館「文福館」(大阪市西成区北津守3丁目)を開館してから今年で10周年を迎えた。蔵書数は開館当初の約3倍に相当する1万5000冊にまで増えた。地元でも憩いの場として子どもたちの人気を呼んでいる。
開館当初から近隣の小学生がくつろげる場を意識して書籍をそろえてきた。本棚には小学生向けのコミック、絵本、児童書、学習事典、文学全集などが目立つ。このほか、美術書、西洋哲学書、中原中也など著名な詩人の詩集と多種多彩。大人も十分に楽しめる。
開館は04年春。蔵書数は約5000冊だった。敷地40坪のスペースにテーブル12卓と椅子を並べた。その後、利用者の増加に合わせて改築し、スペーを広げてきた。現在は当初の2倍の80坪。蔵書数は1万5000冊を数えるまでになった。
文さんは在日2世。幼いころ、亡父の福同さんから「本を読みなさい」と口癖のように言われて育った。長じてフランスの哲学者・レヴィナスの著書に記されていた「他者のために生きて死ぬ」という言葉に啓発され、私財を投じて文福館を開館した。
年間の書籍購入費は150万円を超す。いまでは新聞の新刊案内欄を見るのが日課だ。気に入った本を見つけると心がはやるという。文さんは「本は心を豊かにし、学ぶところがたくさんある」と話した。ネット時代で書物離れが起きているなか、子どもたちにはもっともっと本に触れ、本の良さを知ってほしいという。
この間、東大阪市内在住の日本人から「子どもたちのために役立ててほしい」と、児童書200冊が届いた。文さんは「本当にありがたい」「たとえ人が来なくても、続けていくことが大事。そして何よりも自分が楽しむことがいちばん」と話す。
開館10周年を記念、インターネットやDVD視聴が可能な個人ブースを5席設けた。このほか、館内で子どもたちが遊べるようにとフリースペースも改装中。こちらは26日にオープンする。
開館は土・日曜の11時〜18時。無料。利用にあたっては会員登録が必要。問い合わせは文福館(06・6568・6208)。
(2014.7.16 民団新聞)