掲載日 : [2008-06-11] 照会数 : 8987
脱北者支援民団センター 対象者3倍増150人
[ ボランティアで脱北者の健康診断や心のケアを行う同胞医師
]
定着へ支援続けて5年
教育、住宅・就職の斡旋など
命からがら北韓を脱出し、第3国を経由してようやくの思いで日本にたどり着いた元在日北送同胞らの日本定着に向け、人道的な立場から援助するための「脱北者支援民団センター」(代表=呂健二民団中央本部副団長)が今月3日で発足5周年を迎えた。支援対象者は、当初の約50人からこの5年間で3倍の約150人になった。支援センターでは、今後さらに多くの元在日の脱北同胞らが日本に戻ってくるものと予想し、支援活動の継続および強化のため、募金などの協力を呼びかけている。
03年6月に発足した支援センターは、すでに日本に戻っていたり、今後日本に入国してくるであろう元在日同胞を中心とした脱北者を対象にしている。同じ在日の歴史を刻んだ同胞として、彼らの苦境を座視できないとの自然な情愛と純粋な人道的立場から支援してきた。
多くの同胞の共感を得て、脱北者を支えようとする輪も着実に広がりを見せている。募金についても、これまで民団の各級組織、民主平和統一諮問会議日本地域委員、在日韓国商工会議所会員、各地同胞や日本人有志を含めて、多くの誠金が寄せられている。
支援センターでは、この間、約110人に就業斡旋、住宅斡旋、日本語学校と韓国語のできる医師の斡旋、健康診断などの支援と個別相談など定着に必要不可欠な要素の支援を、民団の地方本部・支部および団員有志らの協力を得て実施してきた。
また、「脱北者交流会」を関東と関西地区でそれぞれ8回ずつ、支援に関わる北朝鮮難民救済基金、北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会など日本のNGO関係者、民団関係者や医師らも交えて行い、交流を深めた。今年も激励のため交流会を計画している。
緊要な「難民」認定・公的対応
脱北者の日本定着をめぐる状況は依然厳しい。把握している在日脱北者らの現状は、不安定な在留資格や日本語、就職、住宅や社会への適応問題など多くのハンディを背負い厳しい生活を余儀なくされている。また、北韓に残してきた家族の安全を確保するため日本で自己の存在が表ざたになるのを極度に恐れ、自由な活動を自ら制限せざるを得ない状況にある。
法的地位の不安定さに加え、不景気な経済状況とも相まって就職はなお困難を極めている。北韓で生まれ育った子弟にとっては日本語の理解、まったく異なる生活習慣や制度などへの適応は容易でない。日本社会に適応していこうとする際に引き起こされる精神的なストレスも依然無視できない。よりきめの細かい支援が必要となっている。
飢餓の常態化が伝えられる北韓の窮状を考えれば、日本に入ってくる元在日同胞関係家族らはさらに増える。それにともない、日本語教育、資本主義や日本の習慣・風習、日常生活の説明・指導ボランティアの不足、支援資金の不足など、遠からず支援センターとNGOが自主的に行っている支援だけでは限界がくる。
06年6月の日本国会で成立した「北朝鮮人権法」は「政府は、脱北者(北朝鮮を脱出した者であって、人道的見地から保護及び支援が必要であると認められるものをいう)の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう努めるものとする」とうたっているが、まだ機能していない。
支援関係者らは「日本政府は、人道主義の立場から脱北者を一日も早く『難民』と認定、脱北者らの定着・自立のための支援をすべきだ。また北送事業を推進した当事者として、道義的な意味からも支援をすべき立場にある」と公的支援を強く求めている。
【支援対象の脱北同胞】
北韓・朝鮮総連および日本マスコミなどの「北朝鮮は地上の楽園」の宣伝にのって、日本での民族差別と貧困から自由になろうと、1959年から84年末までに北韓に渡った同胞は日本人の配偶者も含めて9万3340人。
だが、北韓で待っていたのは「新たな差別と貧困、飢餓」だった。このうち幸いにも、脱北後に日本への入国を果たしたのは、現在のところ約150人になる。
支援民団センター
□連絡先
〒106-8585
東京都港区南麻布1-7-32韓国中央会館6階
℡・FAX
03-3454-5811
□募金口座
郵便振替口座番号 00150-5-546257 脱北者支援センター
□メールアドレス
sien@mindan.org
(2008.6.11 民団新聞)