
南北の政治体制をそのまま保障する「連邦制」を「南北間で合意を見た統一方式」だと主張しながら、同時に南側を「かいらい輩党」と強調・誹謗してやまない論理破綻。総連機関紙「朝鮮新報」10月15日第2面の「連邦制」に関する解説と「10・4南北首脳宣言」発表7周年に際しての南昇祐総連中央副議長談話だ。北韓独裁政権の忠実な代弁機関である総連の南北統一問題に関する建前(南北は対等)と本音(南は米国のかいらい政権で打倒対象)を同一紙面で、はっきりと見ることができる。
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建前と本音
独裁維持を最優先…全民族の意思・利益と強弁
金志永記者(同紙副局長)による解説「平和統一実現の唯一の方途‐再び注目される連邦制の正当性と体制対決の危険性」は「北と南は6・15共同宣言で統一方案に対する共同認識を確認しそれを内外に公表している」と強調、「外務相の国連総会演説が示しているように連邦制統一に対する国際的支持を呼びかける朝鮮の対外活動は今後もっと活発に展開されるだろう」と結んでいる。
同一面に掲載された「連邦制統一方案に対する国際的支持を呼びかける/朝鮮外務省軍縮および平和研究所代弁人談話」もまた「連邦制統一方案」は「北と南が合意した統一方式」だと主張している。
だが、6・15宣言(第2項「南と北は、国の統一のための南側の連合制案と、北側の低い段階の連邦制案が、互いに共通性があると認定し、今後、この方向で統一を目指していくことにした)は、最も肝心な統一の中身、どのような統一国家をめざすのかについての言及はもとより、示唆すらしていない。
似て非なる「連合制」
そもそも「連合制」と「連邦制」は、似て非なるものだ。韓国では盧泰愚政府(88年〜93年)以来、統一のプロセスとして南北連合構想が公論として維持されている。南北両政府がそれぞれ軍事権と外交権を持ち、ゆるやかな「連合」体制の下で交流協力を進め、南北社会の等質化をめざし、最終的には民主的な南北統一選挙による統一国家の形成を目指している。
これに対して、北側が主張している連邦制とは、前述「解説」で言及しているように1980年10月10日の朝鮮労働党第6回大会で金日成が提示した「高麗民主連邦共和国」創立方案で、連邦を過度的な段階とみなすのではなく、異質な南北の2体制のままをもって統一の最終段階・完了とするもの。つまり、現在の独裁世襲体制の存続を、「南北合意」の美名のもとに正当化しようとするものだ。
このため、南側の統一方案中の連合制と北側の統一方案の連邦制のどこに共通点があるのか、当時から疑問・批判の声があり、今も続いている。 それにも関わらず総連中央は、このような6・15宣言をもって連邦制を南北間で合意を見た「統一方式」で「全民族の意思と要求、利益にかなった公明正大で実現可能な最も現実的な統一方案」などと強弁してやまない。
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恥ずべき罵詈雑言
対話対象の打倒誓う…矛盾隠さぬプロパガンダ
同一面に掲載された南昇祐副議長の談話「南朝鮮かいらい輩党の反民族的、反統一的策動を叩き潰し、北南宣言実践のための挙族的闘争に邁進しよう」は、南北対等・相互尊重に立脚しているという「連邦制」主張とまったく相反し、民主的選挙により選出された朴槿恵大統領・政府を「かいらい輩党」と規定、排除・打倒対象としている。
同談話は「朴槿恵輩党」「朴槿恵」との呼び捨てにとどまらず、南北相互交流・協力の推進・拡大を通じての平和・民主統一推進を明言し北韓に対話を呼びかけている朴大統領について「南朝鮮の政治史には国を米国に仕えて捧げ、同族との対決を叫び、統一を阻む民族反逆者たちが少なくなかったが、朴槿恵のように民族と歴史の前にぬぐいきれない万古大罪を犯した事大売国奴、万古逆賊はいなかった」と口を極めて罵倒している。
南解放路線支持を明言
同時に「総連と在日同胞は偉大な大元帥様たち(訳注・金日成と金正日)の不滅の業績を万代にずっと輝かせる敬愛する金正恩元帥様がいらっしゃれば、わが民族は自主統一、平和繁栄を実現できるとの必勝の信念を持ち、祖国統一を妨害する逆賊輩党の反民族的罪業を叩き潰し、6・15共同宣言と10・4宣言を実践するための挙族的闘争に力強く邁進する」と表明している。
これに先立ち総連中央の許宗萬議長は、今年5月の総連第23回全体大会での報告で金日成・金正日を「民族の永遠の太陽」として高く戴くことを確認するとともに、「敬愛する金正恩元帥様をわが祖国と民族の最高領導者に高く戴く」との誓いを新たにしている。
総連中央は、昨年春に北韓が3回目の核実験を強行した後、休戦協定の全面白紙化、不可侵を含む南北基本合意書の全面破棄、韓半島非核化共同宣言の全面白紙化声明をはじめ、核先制攻撃や全面戦争再開を示唆するなどしていた時には、益柱副議長談話「全体在日同胞は正義の統一愛国聖戦に果敢に力強く立ち上がるだろう」(3月22日)を発表。
「今こそ全同胞が米国と親米かいらい逆賊たちの侵略戦争策動を断固反対・排撃して米帝侵略軍を南朝鮮から追い出し民族最大の宿願である祖国統一を達成する聖戦に決然と立ち上がる時だ」と、決起を促した。
このように総連中央は、「連邦制=南北合意統一方案」であるかのように喧伝する一方で、韓国を「米軍の占領地域」とし、朴槿恵政府を「米帝のかいらい」視することをやめず、「連邦制」主張とは相容れないはずの独裁世襲政権による「南朝鮮解放統一」への支持を明確にしている。
北韓において憲法よりも上位にある「朝鮮労働党規約」はその「序文」で「当面の目的は共和国北半部で社会主義強盛大国を建設し、全国的な範囲で民族解放、民主主義革命を遂行するところにあり、最終的には全社会を主体思想(金日成・金正日主義)化するところにある」と明記。「南朝鮮で米帝の侵略武力を追い出し、あらゆる外部勢力の支配と干渉を終わらせ、(略)わが民族同士で力を合わせ、自主、平和統一、民族大団結の原則で祖国を統一し、国と民族の統一的発展を成し遂げるために闘争する」と謳っているからだ。
今回の「南副議長談話」「連邦制解説」のいずれでも、朴槿恵政府の対北・統一政策について「一つの制度による統一、相手方を食べてしまう吸収統一を追求している」などときめつけ激しく非難している。
「吸収統一」追求やめず
だが総連中央の報告・談話などを素直に読み解くならば、北韓こそ「吸収統一論」、それも「平和的・民主的」ではなく、3代世襲体制を存続させる「金日成王朝下統一」という、まさに「反動的で最悪な吸収統一論」を一貫して唱え、追求していることが明らかだ。
北韓憲法第11条は「朝鮮民主主義人民共和国は、すべての活動を朝鮮労働党の指導の下に行う」と規定している。北韓が、いささかでも「南北の政治体制をそのままに両政府の独自の活動を保障」する「南北対等・相互尊重を標榜する連邦制主張」に正当性を持たせたいならば、まず、韓国の大統領・政府に対する「かいらい」主張を撤回し、二度と繰り返さないことだ。そして「南朝鮮解放・吸収統一」を掲げた「朝鮮労働党規約序文」の改定・破棄に至らなければならない。
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最高指導者の食言
「民族への誓約」ホゴに…「米軍有用発言」にも頬被り
韓国排除の「朝米協定」
総連は、「6・15宣言とその実践綱領である10・4宣言を履行し、統一を成し遂げるためには、まず朝米平和協定を締結しなければならない」とする北韓の指示に基づき、昨年は「朝米平和協定締結」のための署名運動まで行った。
北韓の「朝米平和協定」主張は、休戦協定の当事者である韓国排除を目的としており、非現実的で法理的にも妥当性を欠く、きわめて政略的なものだ。また、「わが民族同士」という6・15および10・4宣言の基本精神とも明らかに背いている。
6・15宣言の署名者、金大中大統領は、金正日との共同宣言発表後の10月(2000年)、「休戦協定締結当時、米国のクラーク将軍が署名したが、これは国連軍代表(総司令官)として行ったもので、韓国は国連軍の一員だったので当然協定当事者である」と指摘。翌年の韓国戦争51周年に際しての演説では、「韓半島での休戦状態を終息させるために南北間で平和協定が締結されなければならない。平和協定はあくまでも南北当事者が主導しなければならない」と力説していた。
07年の盧武鉉大統領と金正日による10・4宣言も、「南北は、現在の休戦体制を終結させ恒久的な平和体制を構築すべきだという点で認識を共にし、直接関連する3者または4者の首脳が韓半島地域で会談し、終戦を宣言する問題を推進するために協力していく」と約束している。
「3者」は南北+米国であり、「4者」は南北+米中だ。当然のことながらいずれも南北を主役としている。
そもそも北韓が韓国排除の「朝米平和協定」を主張するようになったのは、74年3月(最高人民会議名で米国議会宛の書簡送付)からのことである。それまでは平和協定を南北間で締結することを主張、提案していた。
たとえば金日成は72年1月、日本の「読売新聞」特派員との単独会見で「朝鮮での緊張を緩和するためには、なによりも朝鮮休戦協定を南北間の平和協定に替える必要がある」と強調していた。
その後、南北間では、91年12月の南北総理会談で、南北平和協定に相応する協定を結ぶための「南北基本合意書」(南北間の和解と不可侵および交流・協力に関する合意書)に署名している。
この南北基本合意書について金日成は、92年2月、平壌での第6回南北総理会談を終えた双方の代表団を前に声明書を読み上げ、「今回発効した合意文書(南北基本合意書と韓半島非核化共同宣言)は北と南の責任ある当局が民族の前に誓った誓約だ」と表明。「共和国政府はこの歴史的な合意文書を祖国の自主的平和統一の道で達成した高貴な結実と考え、その履行にあらゆる努力を尽くす」と約束していた(林東源「南北首脳会談への道 林東源回顧録」/岩波書店、08年)。
金正日も、この南北基本合意書について、翌92年1月に金容淳労働党対南秘書を米国に特使として送った際に、米国側に前年12月の採択を伝えた。同時に駐韓米軍ついて「米軍が引き続き残って、南と北が戦争をしないよう、防ぐ役割をしてほしい」と要請している。
金正日はそのことを6・15宣言発表に先立つ6月14日の金大統領との会談で正式に説明。さらに「私の聞くところでは、金大統領は『統一しても米軍がいるべきだ』とおっしゃいましたが、それは私の考えとも一致します」と強調している。
「では、どうしてメディアでは相変わらず米軍の撤退を主張しているのですか」との金大統領の問いに対し、「それはわが人民の感情をなだめるためですから、理解していただくようお願いします」と答え、「米軍がいることで勢力のバランスを維持するようになれば、わが民族の安全も保障されます」と明言していた(「金大中自伝 Ⅱ歴史を信じて 平和統一への道」岩波書店、2011年)。
ちなみに、金大中政府は99年4月、国家安保会議常任委員会の決定事項として1,駐韓米軍は韓米相互防衛条約に基づき駐屯しており、あくまでも韓米間の問題である。この問題は、南北間、または米北間で論議する性格のものではない。韓半島に侵略の危険がある限り、駐韓米軍は駐屯するほかない2,韓半島に平和体制が築かれ、統一された後でも、米軍は東北アジアの安定を図るために韓半島に駐屯するのが望ましいと発表している。
ところが金正日は、6・15発表の翌年の7月、ロシア公式訪問に先だって行ったイタル・タス通信社との会見で「米国がわが国の国土の半分を武力で占領し、わが国を常時威嚇しているということは、周知の事実だ」と平然と述べ、「駐韓米軍有用・統一後継続容認発言」には頬かぶりを決め込んだ。
労働党規約と表裏一体
その後も北韓側は、「米軍は占領軍だ。統一の障害であり朝鮮半島の平和と統一を妨害する最大の障害物である米軍を早期に撤退に追い込むために朝米平和協定が不可欠」との主張をやめていない。
「民族の前に誓った誓約」も「駐韓米軍有用・容認論」もなかったかのような北韓当局の言動、食言は、「10・4」に関しても変わらない。
南北関係・統一問題に関する北韓最高指導者の食言はもとより、民主的選挙で選ばれた大統領・政府に対する「かいらい」呼ばわりは、「南朝鮮解放・吸収統一」の「労働党規約」と表裏一体をなしている。韓国内には、これに呼応する従北勢力が存在するだけに、厳しい対応を忘れてはならないだろう。
(2014.10.29 民団新聞)