掲載日 : [2003-01-01] 照会数 : 2957
対談・民族金融機関の現状と展望(03.01.01)
[ 金建治・韓商連会長 ]
[ 鄭圭泰・韓信協会長 ]
金建治韓商連会長−鄭圭泰韓信協会長
体力強化すすめ真の〞同胞信組〟に
厳しい不況が続く中、2年にわたり在日同胞社会で物議をかもした破綻組合の事業譲渡もすべて完了し、民族金融機関も11組合という新しい体制になった。在日韓国人信用組合協会(韓信協)と在日韓国商工会議所(韓商連)の両会長にこれからの同胞経済の再生に向けた抱負や計画を聞いた。
(司会・李鐘太民団中央本部民生局長)
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従来の役割
差別下での融資で恩恵 鄭 氏
同胞の経済発展に寄与 金 氏
司会 これまで最大39組合あった民族系信用組合が果たしてきた役割は大きかったと思うが。
鄭氏 1953年の大阪商銀を皮切りに、各地に民族金融機関が設立された。地域同胞社会に密着する形で、同胞が懸命に稼いだお金を預金として受け入れ、一方では事業活動を行おうとする同胞に融資してきた。
これら会員組合は、解放後一貫して在日同胞の経済活動促進と経済的地位の向上を使命として運営されてきており、その姿勢が民族金融機関としての役割を端的に示してきたと思う。
ご存じのように日本社会の中には、在日同胞に対する様々な差別があった。特に金融機関に関しては、全くといって良いほど融資を受けることができない状況であった。このような状況の下で、民族金融機関がなければ在日同胞社会の発展はなかったと言っても過言ではない。日本の高度経済成長とともに同胞経済も伸び、在日民族金融機関育成のために本国からの400億円近い資金も投入された。同胞経済人がかなりの恩恵を受けてきたのはまぎれもない事実だと思う。
金氏 民族金融機関があったからこそ、今日の在日同胞経済人の姿があるのは間違いない。過去、日本の金融機関から資金が借りられなかったのは事実。そのような中で、在日商工人にとって民族金融機関が大きな力になった。しかし、現状は破綻が続き11信組になった。そこには情実融資を含め様々な問題があった。バブル崩壊と同時にそれらが表面化し、現在に至ったと思う。今後は過去の経験にのっとって、健全な経営が行われることを期待している。
同胞商工人にとって、民族金融機関はなくてはならないもの。特に、韓商にも中小、零細企業のメンバーが多く、いまだに日本の金融機関から融資が受けられない人もずいぶん多い。そのためにも民族金融機関が求められている。そして、商工人のためにも韓信協傘下の信用組合を応援しなくてはならないことは言うまでもない。どちらが欠けてもダメだ。民団、韓信協、韓商連が名実ともに三位一体で盛り上げて行くことが必要だ。
鄭氏 民族金融機関の設立過程を見れば、相互協力と地域密着の同胞のための機関という精神が貫かれていたことがわかる。民族金融機関はリテール(小口)が求められていたにもかかわらず、いつしかその精神が忘れられていったところがある。貸し手、借り手双方に甘えがあったのが現実だ。これらを過去の教訓としてわきまえ、本来の精神に戻ろうというのが韓信協の一致した意見だ。
司会 50年代後半から70年代まで全国に民族金融機関が作られていったが、当初は日本の金融機関による差別を克服するために自前の金融機関を作ることにあった。遊技業や焼肉店も当初は、今でいうベンチャー企業であった。ベンチャーを民族金融機関が支援したことで成功した。
金氏 30数年前に今の商売を始めたが、愛知商銀から融資を受けた。愛知商銀があったからこそ、今日の私の状況がある。ずいぶん助けられたのも事実だ。
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自助努力
情報開示し信頼回復を 金 氏
魅力ある新商品を投入 鄭 氏
司会 11組合になったが、それぞれが自助努力をしていると思うが。
鄭氏 韓信協全体が〞このままじゃダメなんだ〟という危機意識で一致している。あらゆる面で生き残りのための努力を続けている。まず第一に、資金の増加が急務だ。すなわち預金増強運動。年初から統一キャンペーンを展開する。魅力ある新商品を投入し、新聞広告やチラシ配布など、これまでにない攻めの姿勢でアピールする。
2番目には、経費の節減問題。遊休不動産の売却や赤字店舗の統合なども含めて見直すことが必要だ。
3番目には不良債権の処理。各組合とも不良債権を持っているが、隠すのではなく積極的に開示して引当金を積むことが必要だ。
司会 韓商連の立場から見て、韓信協の自助努力についてどう評価するのか。
金氏 残った11信組はリストラをはじめ積極的に生き残り策に取り組んでいる。特に不良債権を可能な限りオープンにして行くことが必要だ。日本の金融機関でも情報開示が厳しく問われている。同胞金融機関がなくては商工人が成り立たないように、共存共栄の立場でお互いに切磋琢磨する必要がある。
司会 4月からのペイオフ一部解禁によって、中小から大手へと預金流動が激しくなっている。この雰囲気に流されて韓信協の預金者も同様の傾向があるが、民族金融機関に対する信頼回復はどうか。
鄭氏 98年から4年間で関西興銀、東京商銀を含む18信組が破綻したのを現実として受け止めなければならない。
今から信頼回復を図らねばならないが、それには11組合が隠すことなく情報開示を行い、韓信協会員組合として協力しあうことが一番の早道ではないか。一日でできるものではないが、トップをはじめとする経営陣が危機感を持ちながら進めることだ。
また、本国からの支援も欠かせない。本国が支援するというアナウンスだけでも、信頼回復につながり、預金の流出防止と新規顧客の開拓につながる。また日本の金融庁の見方も変わってくる。
金氏 信用不安をうち消すためにも本国からの支援が必要だというのは、みな同じ意見だ。政府が支援することで、大きな信用につながる。
司会 韓信協は、セイフティネットとして80億円の互助基金を作るなど自助努力をしている。韓商連としても参加する形をとっているが、互助基金についてどのような評価をしているのか。
金氏 答えは一つ。商工人の立場として、残る11の信組が健全な状況で運営されなくてはならない。そのためにも信組の安定化を図る互助基金に、もちろん賛成する。
司会 互助基金は、信組の原点である相互扶助の精神を、会員組合間でも進めていくというものだと思うが、互助基金をどのように運営していくのか。
鄭氏 11組合の経営陣は危機感が強い。だから自助努力が必要だという思いから、互助基金制度が発足した。民団を中心として韓商、韓信協が今こそ一致団結しなければ、在日経済が混乱するという思いからだ。残った信組がきちんと運営されることが必要だ。そのためには本国からの支援も重要視される。
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統一預金運動
預金増へ韓商も全力 金 氏
地域協議会とも協力 鄭 氏
司会 地域密着型でなければという話が出たが、民団では各地域ごとに地域協議会を構成して民団、韓商、信組とが三位一体で取り組んで欲しいと提案してきた。金融機関側から見て、協議会がどのような役割を果たすことが一番よいのか。
鄭氏 掛け声でだけでなくて「生き残るためにどうするか」を協議会を通じて団員に告知して欲しい。そのためには、信組側も情報開示を進めなければならない。例えば、遊技業者は最低10以上の業者と取引がある。60万人同胞の60分の1である1万人が10人ずつ紹介すれば10万人になり、10万人が100万円ずつ預金者を紹介すれば1000億円になる。あすか信組はこの方法を展開して成功している。65%が紹介だ。
1000億円をきちんと運営すれば、相当な利潤が出る。仮に5年間運用すれば大きな利益が新たに生まれ、不良債権の赤字そのものが消えていくことになる。では現実にはどう対応するか考えた時に協議会の存在はありがたい。
地域密着型は続けるが、広域の基盤づくりも急ぐ必要がある。2005年までにある程度メドを付けていく。当面は2つか3つにまとまるだろうが、将来的には一本化は避けて通れない状況にある。信組、信金、銀行など様々な形態を含めて研究し、民団、韓商連、韓信協が協議しながらどの形態が最も同胞にとってよいのかを探りたい。ただ、各地域が努力して基盤整備を進めることが最優先で、それなくして合併はありえない。
司会 1月6日から各組合の強化のために統一預金を展開するが。
鄭氏 生き残りをかけ、自分たちで自らを守っていくために今回の統一預金を力を合わせて実施していくことになった。経費もかかるが、一致団結して展開することに意義がある。統一預金をぜひ成功させたい。
金 ぜひ頑張っていただきたい。韓商としても当然のことながら全面的にバックアップしたい。
鄭氏 経済人が動いてくれなければ金融機関は育たない。預金もしていただき、融資も活用して欲しい。
金氏 困難な経済状況はまだ続くだろう。このような時期だからこそ、信組が健全経営で発展してもらわなければ、経済人も困る。互いに努力して発展して行ければと思う。
司会 11組合が生き残っていくための危機意識の下で互助基金の創設があり、統一預金のキャンペーンが始まる。統一預金が成功するかどうかが試金石といえよう。
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同胞経済の再生
若手経営者への対策を 金 氏
人物評価含め融資決定 鄭 氏
司会 信組の数は減ったが、今まで民族金融機関の活動が空白であった所も新たに営業地域に組み入れられるなど地域的には拡大した。今後、韓信協そして個々の信組はどのようにあるべきか、そして同胞経済の再生をどう進めていくのか。
鄭氏 今は組合への信頼を回復することが必要。まずは個々の組合がしっかりと経営基盤を固めなければならない。日本では最近、都市銀行の国有化問題が騒がれるなど、日本の金融環境は相当厳しい。ペイオフが2年延期されたが、2005年には完全にペイオフが解除される。だからこそ個々の組合がしっかりと体力を付けねばならない。
金氏 ペイオフは延期されただけで、2年後には確実にやってくる。2年の間に名実ともに体力を蓄えていただき、同胞商工人の金融機関としての役割を担ってもらいたい。様々な商品を開発して頑張ってもらいたい。われわれ商工人もお手伝いできる部分がたくさんあると思う。その中でも日本の公的資金、助成金の取り扱いなども積極的に展開してほしい。地方にいる多くの同胞商工人が利用できるように。
鄭氏 いい指摘だ。韓信協の名においてやっていきたい。会員組合の中には小口融資を対象として、都銀で実施しているような無担保無保証で300万円まで融資するフリーローンのような制度を検討している所もある。韓信協でも制度化を検討していきたい。
金氏 ぜひとも早く実施して欲しい。
鄭氏 民族金融機関の必要性や良さはどこにあるのか。会員信組の例では、お金は「貸すんじゃなくて借りてもらうんだ」という考え方をとっている。融資は、担保評価だけでなく、事業の内容・将来性と経営手腕などの人物評価を含めた3つで評価するようにしている。これが民族金融機関の良さだと思う。今は、担保評価主義だけでは非常に厳しいものがある。
一方、過去の轍を踏まえて、融資に際して、経営的な改善策を相談させて欲しいと企業経営に加わっている例もある。一方、RCCに行った企業を「何とかできないのか」といわれるが、情はあっても現実的にはできない。お互いに甘えの構造ではいけないということだ。
金氏 一生懸命に取り組んでいる2世、3世のまじめな経営者を包容するような融資策をぜひともとって欲しい。米国では、人物本位で融資するところが現実にある。まじめな商工人、成長株である商工人に先行投資する気持ちでお願いしたい。
鄭氏 金融機関として、2世、3世商工人を相談の相手として積極的に対応していきたい。
司会 韓商連が保証協会の役割を担う時期にきているのではないだろうか。華僑は若手ベンチャー企業に関して、企画を評価すれば他の経営者たちが投資をしている。金融機関が融資するに当たって、韓商連が保障するような補完的な役割を果たすような仕組みができればいいのではないか。
鄭氏 信用保証協会は銀行が集まって構成した公的な機関だ。韓商連はあくまで任意団体だ。韓商連がどこまで責任を負えるかが問われる。
金氏 様々な形で、若手のベンチャーを育てる必要はある。よいアイデアがあれば資金は出てくる。すでに、一般投資家のレベルでは企画に対して投資したい人を募る例もでてきており、将来はそのような状況ができればうれしい。
鄭氏 韓信協としても、どのように参画できるのか積極的に研究してみたい。
金氏 お互いの研究課題だ。
(2003.01.01 民団新聞)