掲載日 : [2003-01-01] 照会数 : 2813
高齢化社会担う同胞実践者−「高麗いきいきクラブ」(03.01.01)
[ 食事の席でお年寄りを激励する呉龍浩さん(中央) ]
在日1世を地域で支えあう、大阪府内のボランティア活動者
在日同胞社会でも1世の高齢化が急速に進みつつあるが、行政には在日同胞の文化や歴史、生活背景を考慮した福祉サービスを提供しようという視点はまだまだ不十分。しかも、在日同胞高齢者はそのほとんどが無年金で、経済的にも困窮を強いられているのが現状だ。こうした在日同胞高齢者が人間としての尊厳をもって生きられるようにするにはどうしたらいいのか。試行錯誤しながらも大阪市と東大阪市で街かどデイハウスの運営や行政の福祉相談員として同胞高齢者福祉を担う同胞実践者たちの取り組みを通して考えてみた。
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民団支部を癒しの場に
街かどデイ「高麗いきいきクラブ」
呉龍浩さん
民団大阪・布施支部の駐車場スペース内に設置された10畳ほどの独立した木造家屋。入り口には街かどデイハウス「高麗いきいきクラブ」の看板が掲げられている。登録者は同胞ばかり17人(昨年12月現在)。
ここでは平日の午前9時から午後4時まで同胞のお年寄りたちのにぎやかな声が絶えない。室内には将棋、囲碁、韓国語の放送が楽しめるテレビなどが備えられている。なかでも「ファト」(花札)の人気が高い。 参加者の平均年齢は80歳。ある同胞のお年寄りは「家にいても時間をもてあますからと日本の老人クラブに行くが、相手がおらんし、アホみたい。ここに来れば仲間に会えるし楽しい」と話す。このほか「行くところがないので支部会館でこうしたことをしてくれているので喜んでいる」というお年寄りもいた。
お昼には食事のサービスがあり、血圧測定など健康チェックも受けられる。お年寄りを抱える家族の側も「家でチャンソリが少なくなった。ストレスの解消につながっているようだ」と歓迎している。
東大阪市の委託を受けて街かどデイハウスの開設を担った在日2世の呉龍浩民団布施支部支団長は、「高麗いきいきクラブ」を「いやしの集まり」と位置付け、次のように話している。「アボジやオモニが既存のデイハウスに行って、どんな思いをしますか。民族的な風習も育った環境も違う。辛いだけですよ。定住外国人には別枠の制度が必要だったんです」
街かどデイハウスとは民間の非営利団体が既存施設を活用、高齢者がいつまでも自立生活を続けられるようサービスを提供していく施設。運営に関わる経費は大阪府が4分の3、大阪市と堺市を除く各市町村が4分の1を補助している。民団大阪管内では布施支部のほか泉北支部がすでに自治体から委託を受けて実施中。また、八尾支部でも準備を整えて申請中。 民団布施支部は00年11月に申請、01年3月からスタートさせた。すでに民団支部の傘下に東大阪老人会という組織を抱えていたこと、お年寄りが集える自前の施設を持っていたことなど、条件的には恵まれていた。
しかし、それだけではない。民団布施支部が地域社会、行政と培ってきた強固な信頼関係も「高麗いきいきクラブ」の誕生に大きな役割を果たした。そもそも街かどデイハウス支援事業の存在について民団布施支部に情報をもたらしてくれたのは、東大阪国際フェスティバル実行委員会のメンバーからだった。
きっかけは、市の教職員組合をはじめ地元の有力な市民団体が実行委員会を構成、市民レベルで始めた1年に1回の手作りイベント「東大阪国際フェステイバル」から。昨年で7回目を数えた。呉支団長は第1回目から共同代表の一員を務めてきた。同フェステイバルは回を重ねるごとに市を代表する祭りとして育ち、民団と行政との関係も深まっている。
呉支団長は「民団が地域社会と行政からきちんとした認知を受けているからこそパイプができ、有益な情報をもたらしてくれるようになった。いまは『在日』の問題ならば何でも相談に来る」という。
布施支部によれば、民団が街かどデイハウスの委託を受けてからというもの「民団が団員の生活に直接関わってくる存在であることをよく理解してくれるようになった」と話している。
(2003.01.01 民団新聞)