掲載日 : [2003-01-01] 照会数 : 3971
高齢化社会担う同胞実践者−「さらんばん」(03.01.01)
[ 笑顔でハルモニに話しかける鄭貴美さん ]
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ハルモニに生きがいを
街かどデイ「さらんばん」−鄭貴美さん
街かどデイハウス「さらんばん」は01年10月、市内三ノ瀬にある一軒家を借りて開設に至った。東大阪市から街かどデイハウス支援事業の認定を受けたのは開設から1年後のこと。行政からの補助がなくても運営してこれたのは、ハルモニたちの家族など多くの人からのカンパと、「さらんばん」に集う2,3世同胞らボランティアの力がうまくかみあってきたからこそだった。
スタッフは専従の鄭貴美さん(45)を含めて現在、10人。全員同胞だ。このほか、健康相談を担当する在日同胞医師の秦石賢さんをはじめとして歌やパッチワーク、読み書きの指導を担当している「特別スタッフ」が6人いる。街かどデイハウスとして行政の認定を受けてからはスタッフにわずかながら報酬を出せるようになった。
「さらんばん」は平日の午前11時から午後5時まで。このほか月1回は土曜日も開所。ハルモニたちは東大阪市からが28人、大阪市からも15人が通ってくる。「さらんばん」だけでは手狭になったため02年10月、第2の「さらんばん」ともいうべき「あんぱん」を近鉄線布施駅の前にオープンした。東大阪市からの助成決定の知らせが届いたのもこの日のこと。
ハルモニたちの多くは東大阪市内の夜間中学出身。10年前から卒業後も学び続けたいというハルモニたちの強い意志に応え、韓日市民運動の中で長栄夜間中学の1室を借り、自主的な夜間勉強会「ウリ・ソダン」(同運営委員会主催)を開いてきた。当時から運営委員の一人、鄭さんは、あるハルモニから昼間、人恋しさに時計を見ながら「ウリ・ソダン」の始まるのをじっと待っているという話を聞いて胸を痛めた。
鄭さんは「ハルモニたちに昼間集える居場所をつくってあげたい」と運営委員会に諮った。意見はなかなかまとまらなかったが、最後は「1世たちに残された時間を生きた時間として保証するのは私たち2,3世の役割。最後まで韓国人らしく生きるための場所が必要」との訴えが各委員を動かした。地域の同胞たちもボランティアとして鄭さんの思いに応えてくれた。
「さらんばん」ではハルモニ一人ひとりの尊厳を大事にし、必ず本名で呼び合うのが原則。新たにスタッフとして加わったボランティアの仕事は、ハルモニ全員の名前を覚えることから始まるといってもいい。本名を呼ばれたハルモニたちは民族的自覚を新たにし、仲間に囲まれて表情もみちがえるように明るさを増していっている。
「さらんばん」はハルモニたちのサロンともいえる。わいわいがやがや仲間と一緒になって昼の食卓を囲み、にぎやかにおしゃべりをしたり、ときには歌を歌ったりしながら過ごしている。一方、スタッフは、忙しい時間の中でもハルモニたちからしっかり民族的なものを受け継いでいる。日本社会の中でともすると忘れ去られようとしている民族の心が「さらんばん」でよみがえる。
「さらんばん」がこれからの課題としているのは、東大阪の地域に住む同胞高齢者の実態調査だという。「ただ向こうから来るのを待つだけでは課題が見えてこない」からだ。
鄭さんは「私たちスタッフは手探りで1世たちを迎えている。これからもハルモニたちと元気を交換し、世代を超えて多くの同胞と民族を共有していきたい」と話している。
(2003.01.01 民団新聞)