掲載日 : [2009-01-28] 照会数 : 3636
<読書>サラムとサラン 思いはつながる 人をつなぐ愛の言葉たち
サラムは人。サランは愛。発音は似ているが、四角と丸のパッチムの違いで意味が異なる。それでも、サランがサラムを丸くつつむという解釈は、曲線美の良さを見出した著者ならではの感性だろう。
人と人との出会い、わかりあいたいと願う思いが、それぞれのエッセーに満ち溢れている。「タヌキの恩返し」には、車にはねられて死んだタヌキを手厚く葬ったことが、奇跡のような出来事を招いたある陶芸家の話が紹介されている。その話から、肉や魚など、人間は他の命をいただいて自らの命を保っていること。だから、「ちゃんと生きること、与えられた命をまっとうすること」。それが、他者への究極の恩返しであると、さりげなく命の大切さにつなげていく。
浅川巧や沙也可を訪ねて韓国へ、三浦綾子を訪ねて北海道へ、奇祭を自分の目で確かめようと北陸へ。取材とはいえ、旺盛な好奇心が心の栄養になり、人との縁を大切にする生き様が、「言霊」とも言うべきエッセーを生むのだろう。書き手に飽き足らず、語り手として全国講演の機会が多いというのもうなづける。
何があってもどんなときでも、サラムとサランを忘れないでいたい。愛につつまれて人は生きてゆけるし、つつんでこそ愛は広がっていくからだ。本書を貫くメッセージに心が洗われた。
(朴慶南、岩波書店1700円+税)
℡03(5210)4000
(2009.1.28 民団新聞)