掲載日 : [2009-01-28] 照会数 : 3961
<読書>わが教え子、金正日に告ぐ 命ある限り叫ぶ北の自由
金日成・正日父子のもとで46年間、首領一族の家庭教師を務めた著者が、脱北後、北韓に向け初めて葬送曲とも言える一冊を綴った。
ロシアの大学に朝鮮語を教える派遣教授として赴任した著者は、「ソウルから来た教授を打ちのめせ」という金正日の指令を死守するほどの実力が認められ、ロシア政府から帰化を勧められた。
一方、韓国の情報員も南への亡命を執拗に持ちかけた。拒否すると、韓国戦争の時に生き別れ、死んだとばかり思っていた姉を米国から連れてきた。42年ぶりの再会の瞬間、何も羨むものがないはずの北の大学教授が、下着すら満足に持っていない現実を姉に突きつけられ、葛藤が全身を覆った。
何しろ大学の学長が教室を暖める「練炭供給責任者」と呼ばれ、一年中、練炭を確保できるかが、能力の有無を判定するお国柄である。
「人民を救うために、亡き母が哀願していた牧師になりなさい」。姉の熱心な祈りに頑なな心が氷解したが、姉が帰国した翌日、即刻平壤に戻れとの指示が来た。情報員が準備した隠れ家に6カ月身を潜めた後、ようやく韓国にたどり着いた。だが、初めて経験する資本主義社会の自由に慣れるまでに10年かかった。同じ境遇の黄長氏との劇的な再会と、数奇な運命がもたらす慟哭も胸を打つ。
(金賢植著、新潮社1600円+税)
℡03(3266)5611
(2009.1.28 民団新聞)