掲載日 : [2009-03-11] 照会数 : 4384
<読書>最後の恋文 天国のあなたへ 命を賭して訴えた生き様は
政治家、新井将敬が自殺して今年2月で11年が過ぎた。世間ではとうに風化した事件だろうが、在日社会は今も脳裏から決して引き離してはいない。野党政治家の公設秘書逮捕に見る最近の東京地検の動き、マスコミ報道のあり方は、当時の新井逮捕直前までの手法と似てやしないか。
東大から大蔵官僚、そして政治家へとエリート街道を突っ走り、テレビを使った政策アピールという手法は先駆的で論客ぶりを示していた。時代の寵児のようにもてはやされたが、状況は一変する。
検察情報を元に動いたマスコミの集中砲火とも言うべき「クロ」報道で、本人、家族、周囲が追い詰められていく過程や権力の怖さを、死の直前まで一緒にいた本書の著者である夫人が告発する。
それにしても、なぜ、余りにも軽微な形式犯容疑で、自ら命を絶ったのかという疑問はぬぐえない。「日本人として、自分の理念を曲げてまで生きたくない」と、書いてあったとしても、である。
政界に打って出る際に、立候補のポスターに石原慎太郎議員(当時)の公設第一秘書が、「北朝鮮から帰化」と中傷するシールを貼って逮捕された。差別発言を繰り返す現都知事の体質と無縁ではないと思う側からして、新井の死は今も終わらない保守派VS在日という構造の象徴のような思いがする。
(新井真理子著、情報センター出版局1300円+税)
℡03(3358)0231
(2009.3.11 民団新聞)