掲載日 : [2009-05-13] 照会数 : 4152
<読書>坂の上に雲はあったか 歪んだ「この国のかたち」
「明治国家創成のミスキャスト」を主題とする本書は、日本の朝鮮への侵出、征韓論の具体化は1875年(明治8年)9月の江華島事件を持ってスタートを切るとしている。この外交路線は、明治維新の頭初に誕生したばかりの国家が、混沌とした中ではあったが、理想をかかげて乗り出そうとしていたアジア諸国との友好と連帯の道を大きく転換させるものだった。
幕末から維新にかけ、歴史上活躍した最良の人士が目指した本来の「この国のかたち」を、「別の国のかたち」へと切り換えた歩みとして、これを捉える。
理想と誇りに満ちた「この国のかたち」のために奮闘したのは、横井小楠、勝海舟、坂本龍馬などであり、勝海舟の盟友である西郷隆盛もその一人だとしている。一方、「別の国のかたち」へと導いたのは、明治天皇政府であり、井上馨、伊藤博文、山県有朋、そして野にあった福沢諭吉が決定的な役割を果たしたとする。
「日清戦争と閔妃暗殺」「政治権力とオルグ‐井上馨の役割」「勝海舟」「幕末・維新の原点と明治期におけるそこからの変質、逸脱」の4章に分けて検討した上での結論だ。
最後の章「『坂の上の雲』に見る『司馬史観』と、その問題点」では、「国民作家」と呼ばれた司馬遼太郎の歴史認識に異議を提起している。
(宮崎光雄著、東洋出版、1500円)
℡03・5261・1004
(2009.5.13 民団新聞)