掲載日 : [2009-05-27] 照会数 : 3807
<読書>サラムの在りか 新たな在日の在り方とは
在日3世である詩人が揺らぐアイデンティティーのなかで、ようやく見い出した「自分らしい在りか」についての思いを語っている。
小学校3年生のとき、両親から朝鮮人であることを伝えられるが、厳しい差別から身を守るために、日本人以上に日本人らしくなろうと努めた在日2世の両親のもとで育った著者は約10年間、自らの出自に悩み苦しんだ。
当時、その苦しみを綴った「我が心 十五歳の詩」には、闇の中に閉じこめられた幼き心の疎外感や閉塞感、そして不安などが、痛みを持った言葉で描かれている。だがその著者が青年になり、自己と向き合うなかで、「自民族性」を獲得していくには、民族意識を絶えず持ち続けていくことが大切だと気づく。
この間、著者を「詩人の道に導いた」という尹東柱を知り、魯迅の作品集「吶喊」の一作「故郷」に強く心打たれ、日本人である妻との恋愛を機に、自分は日本人とは異なる存在で、自民族らしさを獲得しよとすればするほど、朝鮮人にはなれない存在であることに気づかされる。
自らの存在を「在日サラム」と自称する。朝鮮、日本という枠に収まりきらず、だがこの日本で、新たな在日を生き続けようとする心を有する者を、サラムと呼ぶ。新たな枠組みのなかで、新たな在日同胞のあり方を模索してきた。
(丁章著、新幹社、2400円+税)
℡03(5689)4070
(2009.5.27 民団新聞)