掲載日 : [2009-05-27] 照会数 : 3880
<読書>再訳・朝鮮詩集 80歳詩人の新たな息吹
金素雲の訳詩集『朝鮮詩集・乳色の雲』は1940年に出版された。島崎藤村が序文を書き、三好達治・高村光太郎ら、当時の日本文壇から絶賛された。
詩の翻訳は難しい。原詩に忠実であろうとすればリズムを失い、リズムを保とうとすれば意訳になる。素雲は後者を選び、流麗な訳は称賛された。40年は太平洋戦争の前夜であり、朝鮮の言葉は抹殺の運命にあった。日本語訳によって朝鮮の魂と言語の価値を日本人に伝えること、そして失われんとする朝鮮文化の価値を守ること、それは素雲が自らに与えた使命だった。したがって、素雲の翻訳はその分だけ原詩との距離を持つことになったが、それは素雲の個人的な野心から出たものではない。
13歳で日本に渡った素雲は、韓日会談が妥結した1965年、ようやく帰国する。しかし、その才能にもかかわらず韓国では不遇だった。韓日間の歴史的なあつれきが原因だった。
金時鐘氏の『再訳・朝鮮詩集』は、約70年にわたって読み継がれてきた詩集に新たな息吹を与えるものだ。素雲訳にはない韓国語の原詩を付した対訳の形式になっており、再翻訳は原詩に比較的忠実でありながらも名訳である。80歳を迎えてなお、ほとばしる思いを保ち続ける詩人の面目躍如と言えよう。
(金時鐘訳、岩波書店、2800円+税)
℡03(5210)4000
(2009.5.27 民団新聞)