掲載日 : [2009-07-15] 照会数 : 5480
根づく「韓国文化週間」 世田谷文学館5年の歩み
[ 同館での詩の朗読会のにぎわい。円内は菅野昭正館長 ]
相互理解深める場に…願う菅野昭正館長
東京の世田谷文学館は6月13日から今月1日まで、「韓国文化週間」を開催した。今年5年目を迎えたこの文化事業は、文学を中心に韓国文化を紹介するもので、全国でも珍しい試み。イベントをきっかけに、日本人市民のなかから自発的な活動を始めた人たちもいる。「韓国文化との交流、日本人と韓国人の相互理解が深まればいい」。同館館長で文芸評論家の菅野昭正さんの期待は年々、高まっている。
詩、小説の今を伝え
日本人の自主サークルも育つ
2005年の第1回目から催されたイベントは、韓国を代表する詩人による朗読をはじめ、「冬のソナタ」のピアノ曲などで知られるピアニスト、イルマさんのライブ、書家のイ・ジュヒョンさんのパフォーマンス、韓国絵本の紹介など多彩だ。
世田谷文学館が文化事業の一環として、「韓国文化週間」を企画したのは、03年に韓国文学館協会加盟館による世田谷文学館の視察がきっかけ。
初めての取り組みに、世田谷文学館主任学芸員の中垣理子さんは、「準備段階では不安はあったが、韓国の出演者の方たちはエンターテイナーで、予想以上のパフォーマンスが繰り広げられた」と当時を振り返る。
イベントは好評で、アットホームな雰囲気が感じられたと話す。
近年、日本では韓国文化に親しむ人が増えている。そのなかで静かな人気を呼んでいるのが詩や小説だ。菅野昭正さんが同館館長に就任したのは07年のこと。以前から詩人の故茨木のり子さんの翻訳を通して、韓国の詩には関心を持っていた。
この年開かれた第3回目で、韓国の詩人による朗読を聞いた。「日本の現代詩は閉鎖的になり、活力を失った状態にあると思う。それに比べて韓国の詩人たちは、言葉と心を大事にしている。詩そのものが盛んに作られているだけではなく、現代という時代の状況に対する意識の高さを感じた。新しく目を開かれたという気がした」
日本では00年前後から、韓国ドラマの放映を機に起こった「韓流ブーム」により、日本人の韓国に対する認識は大きく変化した。だが菅野さんはそれはひとつのきっかけにすぎず、その前から少しずつ、情勢は変わってきていたと分析する。
意識の変革を大事にしたい
象徴的なのは01年の日本の天皇による「韓国とゆかり」の発言だ。「この発言に伴っていろいろなことを見直さないといけない、韓半島から学んだものをきちんと認識しなければというのはあったと思う。そこに韓流ドラマがあって自分たちの文化と日常生活を比較すると、韓国の人とあまり変わりないという意識の変革が、じわじわと起こってきた」
菅野さんは、だからこそ「その意識を大事に育てていくことは大きな課題」だと強調する。
今、文学界でも新たな動きが生まれている。昨年、韓国・日本・中国の文学者たちが連帯を深めていく「第1回文学フォーラム」が韓国で開かれた。韓国からは最新作「パリデギ」で知られる黄暎さん、申京淑さん、日本からは井上ひさしさん、島田雅彦さん、津島佑子さん、平野啓一郎さん、中国からは莫言さんらが顔をそろえた。今年は東京で、12年には中国で開催される予定だ。
良質な作品の紹介こそ使命
作家たちによる文化交流に期待をかける菅野さん。「こういう動きが知られてくれば、読者の意識も変わるし、本当のところ日本の読者は小説にせよ詩にせよ、韓国文学のいいものをそれほど知らないと思う。だから良質な作品を選んで紹介していくことは大事」
同館でのイベントを通じて、絵本や小説を題材にした読書会や語学学習、韓国文化の広報など、自発的な活動を行う日本人市民が出てきた。中垣さんは「一過性ではなく、韓国文化を愛する方たちが増えていってほしい」と熱望している。
「文化運動とは持続的にやることが一番。地味であろうと韓国の文化の今を、『日本の人たちに伝えなければいけない』という大事なエッセンスを私たちなりに考えて、力を注いでいきたい」と菅野さんは話す。
(2009.7.15 民団新聞)