掲載日 : [2009-09-30] 照会数 : 4295
<読書>風と石と菜の花と 済州島詩人選 伝わる風土と人々の体臭
編訳者は早稲田大の名誉教授で、韓半島の歴史・言語・宗教・文化などを研究する朝鮮学会の重鎮としても知られる。
1996年には「耽羅のくにの物語‐済州島文学選」(高麗書林)を翻訳出版している。彼が韓国の一部としてではない「済州文学」にこだわるのは、「韓国で最も辛酸をなめてきた済州島の文学は、もっとも韓国的であり、そのことを通じて、もっとも世界文学たりうる」との思いがあるからだ。
取り上げたのは、現在も済州に住む済州島育ちの詩人19人の71篇。済州の風景と植物、人物と事件、感性と知性、歴史と現在をうたった詩を比較的多く採用し、なかでも4・3事件を題材にしたもの、在日済州人をうたったものなどを意識的に優先したとのことである。
4・3事件の悲劇性はともかくとして、その勃発と経緯についてはなお論議の対象になっている。編訳者はそうした事情を念頭においてか、「特定の主義、主張やグループに偏らず、済州文学の現在を外国人の目で見て、できるだけ客観的に反映しようと努めた」と書いている。
この詩集には、当然とも言うべき漢拏山をはじめ、海辺、水平線、海女、石の塀、星、ススキなどがたびたび登場する。済州島の風土と人々の体臭が伝わってくる。
(大村益夫編訳、新幹社、2000円+税)
℡03(5689)4070
(2009.9.30 民団新聞)