韓日理解の一助を願って
来日12年になる韓国語講師の朴校煕さん(34)は9月、日本の韓国語学習者が綴った自分史を収録した日韓対訳本『韓国語と私』(韓国、万人社刊)を自費出版した。紹介されているのは、大学や市民講座などで熱心に学ぶ10代から80代までの日本人、在日など104人。同書を通じて「どんな人がどんな思いで勉強しているかを韓国人に知ってほしい、日本人には韓国をもっと理解する一助になれば」と願う。朴さんに聞いた。
心に根ざす学び切々
「貴重な記録 未来のために」
『韓国語と私』は、「素晴らしい出会い」「韓流ブームを契機に」「2つの世界」の3部で構成される。自分史を綴ったのは、朴さんが講師を務める生徒たちだ。
同書は07年、韓国語講師になって10年目となる節目の年に、懇親会を通じて聞いてきた生徒たちの話をまとめたいと企画した。
「いろいろなきっかけで、勉強を始めたという話を聞くうちに、韓国の人にも伝えたいと思いました。また、韓流ブームで勉強を始めた方とは異なる戦争体験者の話もあり、これは歴史的にも貴重な記録として、残していかねばならないという使命感も感じました」
苦難の時代記述に驚き
投稿者のなかには、幼少期や青年期を植民地時代の韓半島で過ごした人もいる。2歳のとき、父母とともに玄界灘を渡った85歳の千葉文枝さんは、官立京城女子師範学校の第1回生。学校で韓国語は必須科目だった。だがそれも60年前のこと。ソウルで開かれる同窓会で、韓国語で話したいからと始めた。感想文には同窓生だった韓国人女性に対する思いや、北韓にいる友人たちの消息を案ずる言葉がしたためられている。
田崎彰一郎さんと中山郁子さんはともに、日本が韓国で行ってきた行為を思うと、「観光目的で訪れることはできなかった」と胸の内を吐露している。
植民地時代は過去の話と思ってきた朴さんは、これらの記述にショックを受けた。「私の周りで直接、植民地時代の話しをしてくれる人はいなかった。でも日本に来て、その時代を生きた人たちの話を聞き、まだ歴史は終わっていないと感じた」。だからこそ「教えない訳にはいかない。未来につなげていくために過去は知っておかないといけない」と訴える。
「在日の方もぜひ学習を」
このほかにも韓国での心温まる話や、生活習慣を知らなかったがゆえの失敗談などが紹介される。なかでも、目を引くのが在日同胞の感想文だ。高校までの12年間、民族教育を受けてきた金慶和さんは、韓国人と比較して、言葉の表現や抑揚の違いを感じ、韓国語を学び始めた。高優里(高島優里)さんは、韓国語で両親と話すのが夢だ。
中国の朝鮮族出身者やアメリカ人女性の内容も興味深い。
韓流ブームが取っかかりになった人も多い。「これまで必要がないとか、否定的なイメージがあった。でも韓流スターが好きで、韓国に興味が出てきたという自然な理由が動機となって、韓国語を学ぶ階層が広がることはいいこと。この勢いが冷めないでほしい」
さらに朴さんが思いを馳せるのは、在日の存在だ。来日して初めて、在日の現状を知り驚いた。韓国語学習者の大半は日本人だ。そのことを寂しく感じている。「もし、在日であることが引け目となって、遠ざかっているならこの本を読んでほしい。勉強への意欲につながれば」と期待する。
普通の人の言葉の重み
97年、大邱教育大学の短期交換留学生として、姉妹大学の兵庫教育大学に来た朴さん。1年間で人生観、価値観が変わり、日本語を通じて勉強の楽しさを初めて味わった。来日当初、兵庫県小野市と三木市の市民講座で韓国語を教えていた橋本利昭さんと知りあったことから、自らも韓国語講師の道を選択した。兵庫・播丹支部事務所で教えたこともある。
「この本を読めば、日本人の韓国に対する熱い思いや、歴史に対する考え方や真剣さに、韓国人は向き合うようになると思う。日本の普通の人の言葉が、心を打つはずです」
『韓国語と私』は3000円(送料込み)。申し込みは朴校煕(℡090・8052・6634)、e‐mail
kyoheepark@hanmail.net
1月に記念の集い
『韓国語と私』出版記念の集い‐発表・交流会が来年1月23日、東京・新宿区の韓国文化院ハンマダンホールで開かれる。
投稿者の発表、朴校煕さんのあいさつや出版後日談と裏話ほか。開会13時半。参加費・発表会は無料。交流会は実費。
(2009.11.5 民団新聞)