掲載日 : [2010-04-14] 照会数 : 8451
<寄稿>洒脱な葬いの群像 山本俊介(京都・高麗美術館)
[ 喪輿を飾る木偶(1920〜30年代) ]
[ 極楽鳥に乗る童子(茶房「李白」で) ]
詩情漂う造形の妙
おおらかに喪輿を飾って
このたび、特別企画展として日本では初めての《李朝の「木偶」展》を20日から東京、そして7月7日から京都に巡回して開催することになりました。
これら朝鮮の「木偶」は、愛玩のための人形ではなく、郷土玩具でもなく、また、副葬品として埋葬される俑(よう)や明器(めいき)でもありません。朝鮮時代の後期、主として身分の高い人たちの葬儀の喪輿(もこし)に装飾された木の人形たちです。およそ19世紀後半から20世紀半ばのものと思われます。
土葬が習慣であった朝鮮では、葬儀の際に遺体を墓地まで運搬する棺を納める小室を有した輿のことを「喪輿」(サンヨ)と言っています。この喪輿を装飾する木彫りの人形が「木偶(モグ)」や「木人(モギン)」そして「ナムコット」と呼ばれるものです。
高位の人の生を讃えて
喪輿は葬られる人の位の高さによって規模が異なり、装飾される木偶の内容も様々です。木彫りの人形で装飾されたものは極く限られた両班のものや、村落で共同使用されていたもののようです。
生をたたえるおおらかな造形で喪輿を飾り、亡き人を送る朝鮮の死生観の不思議さを感じます。異界との媒介として鳳凰や鳥が輿の随所に装飾されているのが大きな特徴です。
そのほか木偶の種類は、夫婦、家族、童子、童女、そして両班、儒者、道士、僧侶、楽人、大道芸人など様々な人々。龍、鳳凰、鶴、鷺、鳥、兎などの動物。蓮花、牡丹などの植物、そして「騎虎」「騎獣」などの像が多く、豊かな世界が広がっています。それぞれの造形は堅苦しい表現ではなく、簡素かつ洒脱に本質を捉えており、詩的なフォルムが心地よく感じられます。
なお、1基の喪輿に数多くの木偶が装飾されたものは極めて稀れで、国立民俗博物館(ソウル市)に所蔵されている慶尚南道山清郡の崔必周(1796〜1856年)の喪輿は4層構造の宏壮なもので、木偶も多種多様で圧巻です。安東民俗博物館(慶尚北道安東市)にも中規模のものが展示されています。
木偶の収集では、玉浪文化財団(金玉浪氏、東崇アートセンター)コレクションが著名で、ここ5年くらいの間に、私設の「木人博物館」(仁寺洞)、「鶏博物館」(嘉会洞)が開設されて一般に公開されています。
日本では、国立民族学博物館(吹田市)に韓国慶尚北道安東での採集資料が展示されています。東京の古美術ギャラリーでは10年前に展示販売されたこともあるようです。
朝鮮の「木偶」との出会いは、8年前、京都で毎月21日に開かれる東寺の「弘法さん」でのこと。骨董を商う韓国のハルモニが釜山から持ち寄った陶磁器などの中に奇妙な木彫りの人形が2体あり、高価でしたが、ときめくものを感じて即座に買い求めたことに始まり、以来、先月に韓国で求めたものを含めて約100点になりました。
伝統家屋の茶房で展示
今回の展覧会会場の東京の茶房「李白」と京都の李朝喫茶「李青」は、韓国の伝統家屋のたたずまいを湛えた喫茶空間であり、朝鮮白磁、書画、家具などが配され、韓国文化・芸術の雰囲気に包まれた格好の場所です。情趣あふれる空間で、直置きの露出展示により美術館のガラスケース越しに見ることでは味わえない一体感の中で見ることができます。日本ではかつてない朝鮮の木偶100点が一堂に展示される豊かな木偶の世界をぜひご鑑賞ください。
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「李朝の『木偶』展」 東京と京都で開催
【東京展】20日〜6月20日11〜19時(会期中無休)。会場は茶房「李白」(東京都世田谷区宮坂3‐44‐5)。(℡03・3427・3665)。
【京都展】7月7日〜8月8日11〜18時(月曜日休み)。会期中食事メニューは休み。会場は李朝喫茶「李青」(京都市上京区河原町通今出川下ル二筋目東入ル)。(℡075・255・6652)。
いずれも観覧料500円(中学生以下無料)。茶・菓子800円。
(2010.4.14 民団新聞)