掲載日 : [2010-04-28] 照会数 : 4355
<読書>兄弟の江(上・下巻) 混迷の時代貫く家族愛
本書は96年、SBS(ソウル放送)が開局5周年を記念して制作、社会派ドラマの先駆けとして話題を集めた『兄弟の江』を小説化した。
慶尚南道・密陽に暮らす徐家の父、福万は学業優秀な長男の俊秀に、没落した徐家の復興を期待する。福万は俊秀だけを溺愛し、次男の俊植、長女貞子、三男俊浩、母親の順礼に対してさえ、自分に逆らう者には凄まじい暴力でねじ伏せる。
俊植は長男に代わり家族のため密陽に留まるが挫折し、ソウルの裏社会で頭角を現す。一方、貧しい生活を嫌い、周囲の人間を犠牲にしながら保守派の国会議員を目指す冷酷な俊秀。相反する世界に身を置く兄弟の骨肉の争いが始まる。
本書は61年の軍事クーデーターから、70年代の軍事政権の時代を設定している。72年10月17日には当時の朴正煕大統領が、特別宣言を発表。同月21日に行われた国民投票や、74年8月15日、光復節の祝賀行事の席で、陸英修大統領夫人が射殺された記述が、混迷していた当時の韓国社会を浮き彫りにする。
子どもたちの意識の変化、成長していく過程が丁寧に描かれる。そして本書の根底にあるのは、家族愛だ。いったんは、ばらばらになった徐一家だが、家族愛を取り戻すために、三男の払った代償はあまりにも大きく、痛ましい。
(李憙雨原作、朴仙容編訳、竹書房 各1800円+税)
℡03・3264・1576
(2010.4.28 民団新聞)