掲載日 : [2010-05-19] 照会数 : 4290
<読書>創られた天皇制−近現代天皇政治心理史研究 変革めざして幅広く考察
14章だて、485㌻にもおよぶ本書は、第2次世界大戦(アジア・太平洋戦争)後における新しい「日本国」の民主化体制のもとに遺された①旧体制的要因「昭和天皇〈裕仁〉‥天皇制」を主軸に②彼にまつわる政治心理史的な諸問題を③靖国神社に合祀されたA級戦犯という霊的存在を媒介に、日本の天皇・天皇制史問題を幅広く考察したもの。
「人間としての明治天皇や昭和天皇」に対する究明は、正史的な精密さや厳密さから多少離れてでも、裏史・野史・外史的な冒険の領域まで踏みこんでおこなったほうが、歴史の真相に接近できる可能性はより高まるとし、そうした研究の成果を、全体の論旨のなかに総合的に組み込み、解明する研究方法を採用した。
明治維新から今日までの天皇・天皇制を、「帝国日本のために意図的に制作された創造物」とする著者は、「天皇・天皇制の存続可否」問題に焦点を合わせて論じている。論考は「明治天皇の出自」「平成天皇の先祖発言」「天皇陵の歴史と本質」にも及ぶ。
「明治以来、この国家の体制のなかに埋めこまれてきた天皇・天皇制、その『創られた性格、劇場・芝居的性格』は、いまいちど覚醒した学的態度を構えて批判的に歴史分析をくわえられ、事実の解明をおこない、その変革のための方途を採らねばならない」と提唱している。
(裴富吉著、同時代社4800円+税)
℡03・3261・3149
(2010.5.19 民団新聞)