掲載日 : [2010-05-19] 照会数 : 4192
<読書>生死海を尽くさん 生きることの重みを切々と
本書は植民地時代の韓国に生まれ、戦中戦後の混乱期の日本を生きた一女性の、84年の人生を綴った自叙伝。
貧しいながらも両親の温かい愛情に包まれて育った。だが十分な食べ物がなく栄養失調で妹を、次いで父親を亡くしたことから生活は一変する。10歳のとき、母親とともに玄界灘を渡った。16歳で、兄の決めた27歳の同胞男性と望まぬ結婚をする。計り知れない苦労が待ち受けていた。戦時下での新婚生活は貧しく、できる仕事はなんでもやった。
思いがけない、夫の母親と4人の義弟たちとの同居。厳しい暮らしが続くなか、45年7月28日の青森大空襲にあうも生き延びた。解放後は多くの1世たちがそうであったように、密造酒を造り、豚も飼育した。
常に考えてきたのは子どもたちの教育だ。次男の建てた茨城・小美玉市の美野里病院は昨年、創立27年目を迎えた。兄弟全員が一緒の職場で支え合っている。夫もすでに亡くなり、息子たち夫婦に見守られながら一人で暮らす。
苦労の連続だった。何年も泣いた。悲しすぎて涙が出なくなった。今は幸せで涙が出る。「運命を変えることはできると思う。自分の運命を解きながら生きて、どのようによい方向へ導くかが大切」。一生懸命生きることの重みが、ずしりと伝わる。
(朴玉姫著、山本則子執筆協力、日本評論社2200円+税)
℡03・3987・8595
(2010.5.19 民団新聞)